著者である西岡力教授(左)、訳者である李宇衍博士(右)
朝鮮人戦時労働者の手記、初めて翻訳公開!
ならば、日本に渡った労働者は果たして、現在大多数の韓国人が認識するような「奴隷労働」に従事したのか。これもやはり事実ではない。西岡教授は「戦時動員」中、最も強い法的強制力があった「徴用」に関連し、朝鮮人労働者2名の手記を公開する。韓国では初めて翻訳公開される内容だ。
まず、広島東洋工業に徴用された鄭忠海氏の例だ。鄭氏は、会社の寄宿舎で1人当たり2帖の大部屋で新型の寝具を提供された。戦時の食糧難でも三度の食事まで保証され、140円の給料を得た(当時、巡査の初任給が45円、兵士が10円)。夕食後に宴会があったり賭け事を楽んだりしたこともあった。手記には、鄭氏本人が日本人戦争未亡人と密会する内容まである。
次は、吉年可鏻鋳鉄工場に徴用された金山正捐氏(創氏改名)の例だ。金山氏は同僚との言い争いによって徴用で連行された元の作業現場から脱走した。脱走理由は、作業現場の劣悪さではなかった。金山氏は以後、自由労働者になって日本国内の作業現場を転々とした。しかし、彼はそうした中でも高額の賃金を得て、また高価な物を購入したことを告白する。戦時だが、金山氏はタバコも濁酒も簡単に入手した。5日に一度ずつ牛肉も口にした。こうした日帝時代の徴用工たちの姿が、果たして韓国人が認識する「奴隷労働」の姿と少しでも合致する点があるというのか。