初対談のあとで会った時、二階は、安倍に話をすれば菅に通じている。菅に話せば安倍に電話しなくても通じている。総理と官房長官との間に隙間が一切ないつながりは大したものだと感心していた。
以後、二階と菅は事あるごとに2人で会い、意気投合し、菅も二階もお互いの頼みをきっちりと実行に移し、お互い認め合っている。
今回の菅の総裁選出馬も、二階が一番槍でまとめていった。同じ赤坂の議員宿舎ということもあり、菅と森山裕(国対委員長)と林幹雄(幹事長代理)と二階の4人で、最後の詰めをした。
安倍が辞任を表明した8月28日に二階派幹部会を開き、翌29日には菅を支持する意向を真っ先に伝えることができた。
二階派はいつも総裁選で連判状を書く。いま47人だから、さしずめ四十七士だ。連判を揃えた翌日に菅支持を表明し、機先を制したのである。
連判状は1人の漏れもなく全員で書くから強い。普通なら同じ派のなかから2人、3人と反対者が漏れていくのだが、二階派には一切それがない。
二階の気配りと怖さ
田中角栄には気配りと怖さの両面があった。二階の強さもそれに通じるものがある。 以前、中曽根がこう言っていた。 「二階君は竹下さんの気配りとミッチー(渡辺美智雄)の馬力を持っている」
私なりに言い換えると、竹下の気配りと金丸信の突進力を兼ね備えている。田中角栄はそのどちらも持っていたが、二階はその現代版だ。これほど気配りのできる人はいまの政界にはいない。
総裁選の最中、二階から2人で飲もうと電話があった。こんな忙しいときに大丈夫ですかと心配したら、「(総裁選の)幕が開いたときにはもう終わっているのさ」と言っていた。
本当は1分1秒も空き時間などないはずだ。二階が幹事長になってから、党の幹事長室はいつも満員で、大勢がじっと面会を待っている。