永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

かつて中曽根政権が安定したのは、田中角栄がキングメーカーとしてスタートを切らせたからだ。菅政権も二階俊博のおかげで安定したすべり出しとなった。さらに安倍晋三が背後から支え続ける。 菅政権は、2021年9月までの短期政権どころか、長期政権の雰囲気すら漂ってくる。 


初対談のあとで会った時、二階は、安倍に話をすれば菅に通じている。菅に話せば安倍に電話しなくても通じている。総理と官房長官との間に隙間が一切ないつながりは大したものだと感心していた。

以後、二階と菅は事あるごとに2人で会い、意気投合し、菅も二階もお互いの頼みをきっちりと実行に移し、お互い認め合っている。  

今回の菅の総裁選出馬も、二階が一番槍でまとめていった。同じ赤坂の議員宿舎ということもあり、菅と森山裕(国対委員長)と林幹雄(幹事長代理)と二階の4人で、最後の詰めをした。  

安倍が辞任を表明した8月28日に二階派幹部会を開き、翌29日には菅を支持する意向を真っ先に伝えることができた。  

二階派はいつも総裁選で連判状を書く。いま47人だから、さしずめ四十七士だ。連判を揃えた翌日に菅支持を表明し、機先を制したのである。  

連判状は1人の漏れもなく全員で書くから強い。普通なら同じ派のなかから2人、3人と反対者が漏れていくのだが、二階派には一切それがない。

二階の気配りと怖さ

Getty logo

田中角栄には気配りと怖さの両面があった。二階の強さもそれに通じるものがある。  以前、中曽根がこう言っていた。 「二階君は竹下さんの気配りとミッチー(渡辺美智雄)の馬力を持っている」

私なりに言い換えると、竹下の気配りと金丸信の突進力を兼ね備えている。田中角栄はそのどちらも持っていたが、二階はその現代版だ。これほど気配りのできる人はいまの政界にはいない。  

総裁選の最中、二階から2人で飲もうと電話があった。こんな忙しいときに大丈夫ですかと心配したら、「(総裁選の)幕が開いたときにはもう終わっているのさ」と言っていた。  

本当は1分1秒も空き時間などないはずだ。二階が幹事長になってから、党の幹事長室はいつも満員で、大勢がじっと面会を待っている。

永田町で本当に喧嘩のできる政治家は?

関連する投稿


「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

衆院選で与党が過半数を割り込んだことによって、常任委員長ポストは、衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく変化した――。このような厳しい状況のなか、自民党はいま何をすべきなのか。(写真提供/産経新聞社)


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

とるべき財政政策とエネルギー政策を、アメリカの動きを参照しつつ検討する。自民党総裁候補者たちは「世界の潮流」を本当に理解しているのだろうか?


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】トランプ関税は大いなる愚策|藤原かずえ

【今週のサンモニ】トランプ関税は大いなる愚策|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【天下の暴論】怒れ!早稲田マン!|花田紀凱

【天下の暴論】怒れ!早稲田マン!|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!


【天下の暴論】私と夕刊フジ②|花田紀凱

【天下の暴論】私と夕刊フジ②|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載された「天下の暴論」。最後の3回で綴った夕刊フジの思い出を再録。


【天下の暴論】私と夕刊フジ③|花田紀凱

【天下の暴論】私と夕刊フジ③|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載された「天下の暴論」。最後の3回で綴った夕刊フジの思い出を再録。


【予告】「天下の暴論」Hanadaプラスで復活!|花田紀凱

【予告】「天下の暴論」Hanadaプラスで復活!|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!