永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

かつて中曽根政権が安定したのは、田中角栄がキングメーカーとしてスタートを切らせたからだ。菅政権も二階俊博のおかげで安定したすべり出しとなった。さらに安倍晋三が背後から支え続ける。 菅政権は、2021年9月までの短期政権どころか、長期政権の雰囲気すら漂ってくる。 


私の取材経験から、官房長官のタイプは二つに分かれる。  

まず参謀型だ。中曽根康弘首相に対する後藤田正晴長官が典型だが、官房長官がどんどん自分の意見を言う。たとえば、中東に機雷除去のため自衛隊を派遣したいと中曽根が言うと、後藤田は反対して辞表を出し、中曽根は自説を撤回した。これが参謀型長官の特徴的なあり方だ。  

ところが参謀型は問題も起こす。菅の兄貴分だった梶山静六は、官房長官として橋本龍太郎首相を支えていたが、心中では橋本より自分のほうが上だと思っていた。自分の意見を主張するから合わなくなり、橋本が辞職すると、梶山は自分が総理になろうとして竹下派を飛び出て小渕恵三に挑戦し、敗れた。参謀型の複雑さである。  

もう一つのタイプは竹下登首相と小渕官房長官の関係で、首相の言うことを何でもおとなしく聞く、いわゆる忠犬ハチ公型だ。小渕は忠誠を尽くしたからこそ総理になれた。就任後の業績は評価されたが、総理になるとは思われていなかった。  

菅がすごいのは、参謀型でありながら、安倍に対し徹底して忠誠を尽くし、最後の最後まで後継を否定していた。参謀型なのに、ハチ公型に徹したのだ。双方を兼ね備えた人材は過去にいなかったが、これも菅の強みだ。

二階俊博との関係

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もう一つ、菅が強い理由は、二階俊博幹事長と組んだことだ。  

3年前の2月に、私が司会をして『週刊朝日』で2人の初対談をやったことがある。当時、2人は仲が悪いと世間では思われていた。  

対談後、3人でホテルで食事をした。安倍政権と中国との関係がまだよくなかった頃だから、菅は改まって、二階に「今年は真正面から中国と向き合いますので、幹事長よろしくお願いします」と頼んだ。二階は「おう、それは当然だ」と意気投合し、そこから2人の関係はより強くなっていった。

菅は小此木彦三郎の下で11年秘書を務め、二階も遠藤三郎の秘書を11年務めている。その後、菅は市会議員を8年、二階も県会議員を8年務めたという似た経歴をもつ。  

秘書出身の政治家の秘書は大変だと言われるが、たしかに2人とも非常に細かいところまで気がつく。地方議会出身の政治家らしく、根回しに長けているのも共通点だ。

二階派の連判状

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