角栄は毎晩、誰かと飲んで情報を集めていた。二階も同じだ。石破は自室でパソコンをやっているという。私は、石破が人嫌いなのではないかと疑うことすらある。
石破事務所に行くと、資料が山のように積んである。理由を訊くと、明日岐阜に行く。地元の衆議院議員よりも自分のほうが岐阜について勉強したから詳しいと言う。それもいいが師・田中角栄のように永田町の人間関係をもっと大事にすべきではあるまいか。
石破の大誤算は、アンチ安倍からの支持を「安倍の恩」だと気づけなかったことにある。地方で人気があったのは、石破をぜひとも総理にしたいという思いに加え、安倍批判をする連中が少なくなかったからだ。
一般の人々の「安倍憎し」の感情を自分への支持と勘違いした石破にとって、最大のショックは安倍本人がいなくなったこと。いままで自分に寄せられた反安倍票が、半分以上も減ったのである。
「二階さんを外したら党はもちませんよ」
安倍政権内で、菅を嫌っていたのは麻生太郎だ。前回の内閣改造の時、官邸を訪れて総理と直談判し、菅と二階の2人を更迭するよう進言した。幹事長ポストに岸田を置くつもりだったのだ。それなのに、岸田が伸びないまま、二階─菅ラインに制されてしまった。
こうなると後の祭りで、岸田を推して敗れ、菅政権になると、非主流派に転落する。麻生は、石破と同じ立場にならざるを得ない。
安倍と一番仲がいい、と安心していた麻生だが、新政権で干されたらどうしようもない。そこで安倍に菅を切れ、とまで言い続けてきた菅を支持することにした。
麻生は以前から菅・二階を切ろうと画策してきた。安倍もかつて岸田幹事長案を検討し、シミュレーションだけはしたことがある。しかし菅は安倍のところに行って、「二階さんを外したら党はもちませんよ」と進言し、実際、二階を外すことはなかった。
幹事長がもし岸田だったら、安倍政権はモリカケでもっと苦しんで野党に突き上げられていただろう。国会を抑えたのは結局、二階と森山裕国対委員長の力だった。