また、原発からの処理水についても、メディアはいまだに誤解を誘発させる報道を繰り返している。
東電福島第一原発にある処理水中の「三重水素(トリチウム)」はタンク貯蔵分(約860兆Bq)及び敷地内を合わせた総量で約2000兆Bqであるとされる。この量は世界的に見ても一般的で、たとえばフランスのラ・アーグが2015年にたった1年間で海洋処分した1京3700兆Bqにすら到底及ばない。しかも、諸外国で当然ながらそれを原因とした健康被害は報告されていない。
福島第一原発のタンクに溜められている処理水の多くは敷地内での作業員の被曝量を抑えるための応急処理に留まっている。しかし、現在稼働中の設備で再処理することによって、諸外国と同様の処分が可能となる。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67575
ところが、ここでもマスメディアはそうした状況を正しく伝えず、「汚染水で海洋が汚染される」かのような報道を今も繰り返している。その代償として、途方もなく無駄なコストとリスクを国民一人ひとりが間接的に引き受けさせられているとも言える。
メディアのこうした傾向は中央のみならず、地方紙にも見られる。
「秋田魁新報」が著名な水中写真家である中村征夫氏によるトリチウムに関する科学的に誤った声をそのまま掲載させていた。この記事に関する科学的根拠を問い合わせても、完全に無視され続けている。
https://www.sakigake.jp/news/article/20200517AK0019/
ここで例に挙げたようなメディア報道は、いずれも被災地やそこに暮らす人々に対する差別につながりかねない深刻なフェイクニュースであったと言える。そして懸念通り、三菱総研が東京都内で行った調査によると、原発事故から8年以上経った2019年時点でさえも、「約半数の東京都民が、差別につながりかねない誤解をし続けている」ことも明らかになっている。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70534