国情院の発表は、あまりにも辻褄が合わない。国情院は「22人を一カ所に集め、亡命の意思を尋ねたが、そのような意思は示されなかった」と言っているが、これは常識的に考えてあり得ない。脱北者の場合、国情院は通常一人ひとりを別々に聴取し、意思を確認する。国情院は明らかに嘘をついている。しかも、強制送還させるまでわずか7時間という短時間で、決して国情院単独の判断ではないことが分かる。
真相は、「当時、盧武鉉政権の秘書室長だった文在寅が、22人の脱北者たちの亡命意思を調査することなく、7時間の即断即決で板門店を通じて北朝鮮に強制送還させるよう指示した」のだ。
この時、「彼らを北朝鮮に送ったら殺されるのではないか」と強制送還に否定的な意見を述べた盧武鉉に対して、文在寅はこう述べた。
「22人の脱北は韓国政府にとって負担になる。南北関係を良くするために、それは甘受しなければいけない」
これは、政府要職にいた人物から直接聞いた話だ。
韓国の憲法下では、北朝鮮国民は韓国国民とみなされ、韓国領内に来て脱北する意志を表明すれば通常、韓国に留まることができる。ところが、文在寅は政治的利害で脱北者を平気で見殺しにした。
22人全員を公開処刑
北朝鮮に強制送還された22人の脱北者たちは、その後どうなったか。全員、無惨にも黄海海州公設運動場で、銃殺刑により公開処刑されている。国情院は、脱北者たちの処刑説について「確認されていない」としているが、私が脱北者ルートを通じて確認したところ、処刑の事実は間違いなく、北朝鮮内の講演でも「反逆者は処刑する」と22人の処刑について語られているという。
「確認されていない」と嘯く国情院は、そもそも北朝鮮国家保衛部が、脱北者たちの処刑を国情院に逐一報告するとでも思っているのか。
金正恩政権は脱北者に対して公開銃殺はもちろん、その家族までも政治犯収容所に連れていき、奴隷として酷使し、使いものにならなければ殺す。
冒頭で書いたように、私はこの脱北者強制送還事件を題材として『殺人の品格 宿命の沼』を執筆し、人権問題を提起したが、韓国の10社以上の出版社から「本を出版すると政府から制裁、弾圧を受ける」と言われて刊行を断られた。 文在寅一味は脱北者22人の強制送還の真実を明らかにし、歴史の審判を受けるべきだ。