『こんなにひどい自衛隊生活』、誕生のきっかけとなった「少佐」との出会い|小笠原理恵

『こんなにひどい自衛隊生活』、誕生のきっかけとなった「少佐」との出会い|小笠原理恵

「なぜ、自衛隊の待遇改善問題に取り組み始めたのでしょうか」。時々、人から聞かれる。「1999年3月に発生した能登半島沖不審船事件に携わった、幹部自衛官とSNSを通じて友人になったからです」と私は答えている。彼のことを私たち、「自衛官守る会」の会員は「少佐」と呼んでいる――。(「まえがき」より)


能登半島沖不審船事件と「少佐」

(2017年、ウラジオストクにて。職務内容については何も語らない「少佐」)

12月20日に刊行された『こんなにひどい自衛隊生活』(Hanada新書)。発売4日目で増刷が決まったが、その「まえがき」に、海上自衛隊の長谷川卓央元3等海佐から聞いた経験談を書いた。

彼こそが私と自衛隊を最初につないだ人物であり、「自衛官守る会」を発足するきっかけをつくった人物である。私たちは彼を「少佐」と呼んでおり、彼自身も自衛隊員の待遇改善を支えている。

私が商業誌で自衛隊記事を書くようになったのはまさに、この少佐との出会いがきっかけだ。

少佐は、幼少のころから飛行機が好きで、プラモデルの飛行機を作っては天井に吊るしていたそうだ。自衛隊の航空祭を見てパイロットになることを夢見、その後、海上自衛隊航空学生に合格、海上自衛隊の固定翼パイロットとなった。

少佐は哨戒機や多用機、連絡機等に搭乗。そして、1993年、能登半島沖不審船事件が起きた。その際、P-3Cに搭乗し事件に対応したのが少佐である――。

初めて発動された「海上警備行動」

1999年3月23日、能登半島沖で不審船事件が発生。北朝鮮諜報員が使用する無線局A-3を自衛隊の情報本部電波部と警視庁・外事技術調査官室・米軍情報機関が傍受した。また同時に韓国の情報機関NISから公安に「作戦基地から日本にある重要なブツを持ち込む」という情報がもたらされた。

海上自衛隊の哨戒機P-3C と訓練に向かっていた護衛艦「はるな」「みょうこう」「あぶくま」も調査に加わり、佐渡島西方で無線を発信する不審船を発見した。

洋上の「第二大和丸」と「第一大西丸」という船の名前を海上保安庁が確認したところ、第二大和丸については、兵庫県浜坂(はまさか)沖で操業中であること、第一大西丸については、漁船原簿から抹消されていることが確認された。どちらも不審船であることが明らかになった

海上保安庁が威嚇射撃をして、停船命令を発したが、ここで両船は逃走。海上保安庁の能力を超える事態になったため、内閣は自衛隊による海上警備行動を初めて閣議決定した。ここから護衛艦は威嚇射撃、P-3Cは威嚇のための対潜爆撃を不審船前方へ行った(海上警備行動が発令されてもなお、直接、不審船にダメージを与えるようなことは許されなかった……)。

しかし、両船とも防空識別圏の外へ逃走した。万一この不審船がロシア領に入った場合について、ロシアとも協議。ロシア側は領海に入れば即座に撃沈する用意があったという。

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