やがてロシアの崩壊がはじまる
今回最も面白かったことは、実は20万回以上も再生されているあるYouTubeの動画において、家内(石井陽子)がリスト入りしていることについて、「今回はフリーチベットというNGOの方も入っている。もしかして中国に協力しているという態度だったかもしれない」と「深読み」をされてしまっていたことだ。実はその動画の方だけではなく、ほうぼうで「この人はなぜ?」という疑問の声が上がっていたという話が、私のところに聞こえてきた。私や家内のことを知っている人ならともかく、リストだけを見ると、確かに「フリーチベット」という肩書きでは謎としか思えないのだろう。
実際は、私だけでなく家内も「ロシア後の自由な民族フォーラム」に複数回参加し、登壇もしている。また、これがリスト入りの最大の理由だと思われるが、昨年上梓した拙著『やがてロシアの崩壊がはじまる』において、著者の私とともに、通訳・翻訳としてしっかりとプロフィールが記載されていて目立っている。拙著は「ロシア後の自由な民族フォーラム」で議論されていることと趣旨は同じで、ロシア連邦からの独立を訴えている諸民族のリーダーたちへのインタビュー集だ。クレムリンにドローン攻撃を仕掛けた自由ロシア軍団のイリヤ・ポノマリョフ(元ロシア下院議員)や、チェチェン亡命政府首相のアフメド・ザカエフなど、ロシア側から見たらとてつもなく「危険な」人物たちへのインタビューが詰まっている。ウクライナ支援やウクライナの側に立つ研究者・ジャーナリストの書籍は数えきれないほどあるだろうが、ロシアからの独立運動を取り上げたものは他にはない。たまたま肩書きは「フリーチベット福岡」というものでリストに載せられているが、家内もロシアの問題に深く関わっている。
ロシアのアキレス腱が明らかに
私と家内とがロシア入国禁止措置を受けたという事実は、私たちの個人的な体験として語るべきものではない。ロシアからの諸民族の独立運動支援、ロシアの脱植民地化というものが、ロシアのアキレス腱であることが明らかになったと理解すべきだと考えている。在日ウクライナ人の国際政治学者であるグレンコ・アンドリー氏は次のように話している。
「石井さんは裏付ける権威となる肩書きがないのにリストに入れられた。これは石井さんの活動がいかにロシアにとって都合が悪いものかということを表している」
また、『週刊新潮』(2025年11月27日号)は「ロシアが自らの〝弱点〟を宣伝してしまったようなものか」とまで書いている。
ロシアによるウクライナ全面侵攻が始まってから、もう間もなく丸4年が経とうとしている。どうしても多くの人々の関心の向かう先は、戦線の状況や、プーチン大統領やゼレンスキー大統領の発言、さらにトランプ大統領の和平仲介における一挙手一投足、またはヨーロッパにおける支援状況などに集中してしまう。それはもちろん当然のことでもある。しかし私は、今の目の前の問題だけではなく、そもそも北ユーラシア全体はどのような形になることが望ましいのか、我が国の将来にわたる安全保障を考えた時に、今のロシアのままであることが我が国に何をもたらすのかという根本問題から考え直す営みが必要ではないかと考えている。

