夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

民間人にまで及ぶ「ロシア入国禁止措置」は果たして何を意味しているのか? ロシアの「弱点」を世界が共有すべきだ。


約9割が国会議員と政府関係者のはずが

筆者は、2025年11月11日、ロシア外務省から無期限でのロシア入国禁止措置を受けた。個人への制裁だ。それも妻の石井陽子(ランダムヨーコ)と二人でである。ある意味で驚くとともに、ある意味ではそれもまた当然だろうとも思っている。本稿では「ロシア入国禁止」を巡る一連の背景について書いていきたい。

筆者がロシア外務省から入国禁止の制裁を受けたことを認識したのは11月12日のことだ。その日、朝からインターネットにおいて、ロシア外務省が新たに日本人30人を入国禁止にしたとのニュースが流れていた。とりわけ、著名な小泉悠東京大学准教授や細谷雄一慶應大学教授が入国禁止リストに含まれていたことから、お二人の名前を中心にニュースとして出ていた。また今回のリストには日経新聞の現場の記者が複数含まれていたことも特徴であり、その点に触れたニュースも目にしていた。早朝の便の飛行機に乗る前にチラッとニュースを見て、「小泉先生も遂にリスト入りしたのだ」と軽く驚いたといったところだった。

実はロシアによる入国禁止措置は、今回で5回目だ。2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻に際して、日本政府がロシアに対して行なっている制裁への、ロシア側からの報復措置として「入国禁止措置」が発表されてきた。第1回目は2022年5月4日であり、岸田文雄内閣総理大臣(当時)をはじめ閣僚、国会議員、大手メディア関係者、大学関係者など63人に対してだった。その後、回を重ね、今回の30人で合計499人に及んでいる。

その9割弱に及ぶほとんどは国会議員と政府関係者であり、民間人はそれほど多くはない。かつ、その中で大学関係者は「教授」に限られていた。そのため、小泉悠氏は著名ではあるが「教授」ではないために入国禁止にならないのだ、とインターネットでよく話題となっていた。ロシアはこのようなときにも「権威主義」なのだとまことしやかに囁かれていた。そうした背景もあり、今回の入国禁止リストに小泉悠氏の名前が入ったというニュースは、ロシアの「変化」を感じさせるものでもあり、興味深く感じさせられたのだ。しかし、この段階ではあくまでも他人事であり、自分の話ではなかった。筆者が自分自身もリスト入りしていたと認識するのは、さらに数時間後のことだ。

「リスト入り、おめでとうございます」

飛行機が目的地に到着し、家内がX(旧 Twitter)を開くと、フォロワーが「ロシア入国禁止リスト、ランダムヨーコ夫妻も入っている」とメンション付きで書いていることに家内が気づいたのだ。「え、どういうこと?」とあわてて検索すると、ウクライナ国営通信社のウクルインフォルム(日本語版)が30人全員の名前を書いた記事を出しており、何と筆者も家内も二人して入っていることに気づかされた。さらに、私が携帯を開くと、立て続けに「リスト入り、おめでとうございます」のメッセージが各種メッセージアプリを通じて何通も寄せられていた。思わず家内と顔を見合わせて笑ってしまった。遂に来た、という感じだった。

ちなみに現在(2025年12月29日)に至るまで、このロシア外務省による入国禁止措置について、我が国の公的機関から正式な連絡などは私のところには何も来ていない。もちろんロシアからもだ。勝手なイメージだが、ロシアが入国禁止にしたことについて、我が国の外務省などから、「ロシアでこのようにリストアップされているので、決して渡航しないように」などの連絡などが来るのかと思っていたが、そのようなものは何も無い。よって、私自身がロシアから入国禁止にされているということを認識しているのは、ロシア外務省の公式ホームページのリストに名前が載っていること(もちろんロシア語)と、報道機関のニュースによってということだ。そんなものなのかとちょっと拍子抜けした感じがしないでもない。

ロシア外務省ホームページ

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