夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

民間人にまで及ぶ「ロシア入国禁止措置」は果たして何を意味しているのか? ロシアの「弱点」を世界が共有すべきだ。


ロシア最高裁判所から「テロ組織」認定

さて、ロシアの入国禁止リストに入れられたことには驚きがあるとともに、当然とも思っていると最初に述べた。まず驚いたというのは、「入国禁止リスト」という公式な形で私を取り上げたことそのものだ。筆者自身はロシアの情報機関からはマークされているものと従来から考えていた。それと言うのも、ロシア政府より「望ましくない団体」に指定され、さらにロシア最高裁判所から「テロ組織」とまで指定されている「ロシア後の自由な民族フォーラム」に度々参加して、深く関わってきているからだ。

「ロシア後の自由な民族フォーラム」とは2022年5月にポーランドで始まり、現在までに世界各地で合計17回開催されている、ロシア連邦支配下の様々な民族たちの現状や独立運動について話し合いが行われている国際的な言論プラットフォームだ。チェチェンやタタールスタン、ブリヤート・モンゴルをはじめとするロシアからの独立を訴えている人々が結集している。欧米の政治家や研究者、ジャーナリストなども多数参加している。しかし、あくまでも純粋に言論活動だ。執行部や会員組織といったものも何もなく、「組織」と呼べるような体系自体がそもそも何も無いのだが、ロシアは「テロ組織」とまで一方的に断定している。そこで話されている内容自体が余程気に入らないということなのだ。「ロシア後の自由な民族フォーラム」に関心のある方は過去の記事(Hanadaプラス ロシア外務省から激烈な抗議 2023年9月27日公開)をぜひ読んでいただきたい。筆者は東京で開催された第7回(2023年8月)から深く関わっている。そういった経緯もあり、ロシア当局からすれば「ロシアの国家分裂を画策している危険人物」と思われていても仕方がないとも言える。

異色の存在

しかし一方で、先に述べたように、例えば東京大学の小泉悠准教授でさえこれまでリスト入りしてこなかったように、過去の入国禁止措置の対象者はいずれも社会的地位の高い方々ばかりだった。その意味においては、私や家内がリストに入るとは到底考えてこなかったのだ。これまでの入国禁止499人の肩書きを全て見てもらえば、私たち夫婦だけがかなり異色の存在だということが一目瞭然だ。リストには次のように書かれている。

 6、石井英俊 評論家 インド太平洋人権情報センター代表
 7、石井陽子 NGOフリーチベット福岡代表

他の方々は、国会議員、政府関係者、大学教授、大手企業経営者、大手メディア記者であり、私たちのように大きな組織に所属していない人は他にいない。その意味で、私たちがリストに入れられたということに驚いたのだ。ロシア連邦からの諸民族の独立運動支援、ロシアの脱植民地化という私たちの活動について、余程ロシアは神経を尖らせているということではないだろうか。

ロシアからの独立運動を取り上げた「危険な書籍」

関連する投稿


「トランプ・パラドックス」と高市政権の命運|山岡鉄秀

「トランプ・パラドックス」と高市政権の命運|山岡鉄秀

石破政権が残した「相互関税+80兆円投資」ディールは、高市政権に重い宿題を突きつけている。トランプの“ふたつの顔”が日本を救うのか、縛るのか──命運は、このパラドックスをどう反転できるかにかかっている。


米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

トランプ政権の下で、混迷を極める米国。 彼の目的は、いったい何のか。 トランプを読み解く4つの「別人化」とは――。


チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

日本のメディアは「チャーリー・カーク」を正しく伝えていない。カーク暗殺のあと、左翼たちの正体が露わになる事態が相次いでいるが、それも日本では全く報じられない。「米国の分断」との安易な解釈では絶対にわからない「チャーリー・カーク」現象の本質。


日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所で作られ、流出したものであるという見解は、世界ではほぼ定説になっている。ところが、なぜか日本ではこの“世界の常識”が全く通じない。「新型コロナウイルス研究所起源」をめぐる深い闇。


「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「単なるデタラメと違うのは、多くの人にとって重大な関心事が実際に起きており、その原因について、一見もっともらしい『説得力』のある説明がされることである」――あの偉人たちもはまってしまった危険な誘惑の世界。その原型をたどると……。


最新の投稿


夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

民間人にまで及ぶ「ロシア入国禁止措置」は果たして何を意味しているのか? ロシアの「弱点」を世界が共有すべきだ。


おばあちゃんからのメッセージ|なべやかん

おばあちゃんからのメッセージ|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!信じるか信じないかは、あなた次第!


【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】

【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】

月刊Hanada2026年1月号に掲載の『【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】

ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】

月刊Hanada2026年1月号に掲載の『ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

令和五年に、対家庭連合(旧統一教会)に対する特別法が制定されたが、実はこの法律にはとんでもない規定が並んでいた!