新型コロナウイルスの起源に関するCIAの見解変更は、トランプ政権による政治的判断だとの解釈が一部でなされているが、それは間違いである。バイデン政権の間にCIAが到達した結論について公開がストップされていたものを、新長官のジョン・ラトクリフが公にしたにすぎない。では、なぜCIAはそれまで公開を躊躇していたのか。
2023年に米下院監視・政府改革委員会は、CIAの7人の調査官のうち6人は研究所起源と結論していたのに、金で意見を変えさせられたことを明らかにした[10]。さらに、アンソニー・ファウチNIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)所長(当時)がCIAの本部に記録が残らない形で入館していたことも公表している[11]。つまり、CIAの内部で、新型コロナウイルス研究所起源説を潰そうとする勢力がいたため、客観的な分析結果が公開できなかったとみられる。
明らかになった国防省の報告書
2025年4月にはCOVID-19が研究所起源であると評価した米軍の情報機関DIA (国防情報局)の2020年の資料が開示された。さらに同月、2019年に武漢で行われた世界軍人競技会に参加した米国の兵士がCOVID-19の症状を示していたとの国防省の報告書の存在が明らかになった[12]。
天然起源を主張する学者たちは、2019年11月~12月に武漢の海鮮市場で動物からヒトへの感染が最初に起きたと主張しているが、2019年10月での感染者の存在は、天然起源説と矛盾する。