第7回「ロシア後の自由な民族フォーラム」2日目にスピーチするルスラン・グバエフ氏
さらに、19日にはバシコルトスタン共和国の中心都市ウファでも1500人規模のデモが起きた。デモは、元々はフェイル・アルシノフの不当逮捕と判決に抗議したものだったのだが、ウクライナ戦争への反対やプーチン批判まで飛び出したとのことだ。
ロシア・ウクライナ戦争は、前線の膠着状況とは裏腹に、まだ表面的にはあまり見えていないが、大きな動乱を引き起こそうとしているかもしれない。
1991年、巨大なソ連帝国は崩壊し15ヵ国に分裂した。その時に独立を目指したが軍事力でねじ伏せられたのがチェチェンなどであり、または独立にまでは機運が盛り上がらなかった多数の民族がいた。今度のロシア・ウクライナ戦争は、再び大きな地殻変動を引き起こすかもしれない。一旦は冷えて固まって溜まっていたマグマを、戦争という状況が揺り動かしているとも言える。
ロシアの民族問題というマグマが一気に噴き出すかもしれないのだ。今度もまたプーチン体制が力でねじ伏せることが出来るのかどうかが焦点だ。ウクライナの前線にほぼ全ての陸軍が出ていってしまっており、ロシア内部がいわば空白とも言える状況下なのがポイントだろう。
ウクライナ側に立って戦うロシア人義勇軍
昨年11月末には、シベリア東部ブリヤートにおけるトンネルで、軍事物資を運ぶ列車を爆破する攻撃をウクライナの情報機関「保安局」(SBU)がおこなった。北朝鮮からの弾薬などがロシアの兵站を支えている状況で、このような破壊活動が今後活発化していけば、前線に与える影響も無視できなくなるかもしれない。今年1月にはサンクトペテルブルグのガス工場を炎上させるという無人機による攻撃も行われた。
これまでウクライナは、欧米からの政治的な圧力により、ウクライナの国境内部での戦いのみを行ってきていたが、支援が先細りしてきたことに反比例して、ロシア内部への攻撃を始めている。
今月、ウクライナ側に立って戦うロシア人による義勇軍である「ロシア自由軍団」や、「ロシア志願兵軍団」「シベリア大隊」による共同記者会見がウクライナにおいて行われ、今後も「特別解放作戦」を継続するとの発表も行われている。
これらのウクライナ側によるロシア内部への攻撃と、ロシアの民族問題がどう結びついていくか。火種は至る所にある。今回のバシコルトスタンやタタールスタンなどのヴォルガ中流域以外にも、特にチェチェンを含む北コーカサス地方は最も要注意の地域だ。戦争で多数の死傷者を出しているトゥヴァやブリヤートなどのシベリア方面でも不満が大きく高まっている。