「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


「大統領復帰」でどうなる、中東情勢

Getty logo

さらに、中東情勢も混迷を深めている。イスラエルによるハマスのテロ攻撃に対する軍事作戦は着実に進んでいるが、トルコの行動が中東情勢の不安定化に拍車をかけている。トルコのエルドアン大統領は「ハマスは正義の戦士、イスラエルはテロ国家」とイスラエルを非難し、トルコ国内に拠点を置き資金調達を行っているハマスを全面的に支持している。

また、3月23日には、ロシアのモスクワ郊外のイベント会場でキリスト教徒を標的とした銃乱射テロ事件が発生したが、逮捕された実行犯のIS(イスラム国)メンバーはトルコから入国したと話している。ISはトルコで集めた資金が活動源になっていると米国政府公式サイトで指摘されている。

過去、プーチン大統領はトルコのISからの石油密輸を非難し、露国防省はエルドアン大統領の関与を指摘している。このテロでは、130人以上が死亡した。

そして、トルコの情報機関MITの暗躍も、世界各国で注視されている。

MITの工作活動は英国王立防衛安全保障研究所のリポートや各国の報道機関などで指摘されており、MITは、ジャーナリストを活用し虚偽の話を広めるとともにトルコ政府の立場を強める工作活動をしているとギリシャで報道された。トルコは過去にアルメニア人に対し大虐殺を行っているが、アルメニア人を排斥するための工作活動も各国の報道や米国務省の国別人権報告書で指摘されている。

トルコは隣国アルメニアと国交がなく、同じく隣国のギリシャとも犬猿の仲であり、エルドアン政権が中東の不安定要素を作り出し、テロを支援しているという状況となっている。その中で米国は今年1月26日、スウェーデンのNATO加盟をトルコが承認する事とのバーター取引で、F-16戦闘機を40機供与することを決定した。一方で翌27日は、ギリシャに最新鋭戦闘機F-35を40機供与することを決めた。

こうした中、イスラエルによるハマスへの軍事作戦について、トランプ氏は3月5日のFOXニュースのインタビューでイスラエル支持を明言した。大統領に再復帰した場合には、外交ではやはり中東情勢を最優先し、イスラエルへの支持不支持が米国との関係の踏み絵となる可能性が高い。

イスラエルはレバノンを拠点とするヒズボラからも攻撃を受けており、反撃する可能性もある。ヒズボラはイランが全面支援しており、さらに米国は、2月にトルコの企業と経営者をヒズボラに資金支援をしているとして制裁対象に指定した。ここでもトルコの関与が取り沙汰されるが、ヒズボラ、ハマスともイランが軍事面でも支援しており、イランが国家として軍事作戦を始めれば、第5次中東戦争の危機となる。

このように、中東、ウクライナ、そして東アジアにおいて様々な危機があり、トランプ前大統領の再登板でその不安定要素が増すかもしれない。「もしトランプ大統領が」ではなく、「トランプ大統領復帰」を見越して、こうした危機にどのように対処し抑止をしていくのかの外交と防衛を我が国は構築していかなくてはならない。

著者略歴

和田政宗

https://hanada-plus.jp/articles/681

1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。

関連する投稿


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

ある駐屯地で合言葉のように使われている言葉があるという。「また小笠原理恵に書かれるぞ!」。「書くな!」と恫喝されても、「自衛隊の悪口を言っている」などと誹謗中傷されても、私は、自衛隊の処遇改善を訴え続ける!


【我慢の限界!】トラックの荷台で隊員を運ぶ、自衛隊の時代錯誤|小笠原理恵

【我慢の限界!】トラックの荷台で隊員を運ぶ、自衛隊の時代錯誤|小笠原理恵

米軍では最も高価で大切な装備は“軍人そのもの”だ。しかし、日本はどうであろうか。訓練や災害派遣で、自衛隊員たちは未だに荷物と一緒にトラックの荷台に乗せられている――。こんなことを一体、いつまで続けるつもりなのか。


ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパに君臨した屈指の名門当主が遂に声をあげた!もはや「ロシアの脱植民地化」が止まらない事態になりつつある。日本では報じられない「モスクワ植民地帝国」崩壊のシナリオ。


最新の投稿


【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

高齢者のインフルエンサーと呼ばれ、ベストセラーを次々と出してきた和田秀樹氏が「幸齢党」を立ち上げた。 なぜ、いま新党を立ち上げたのか。 「Hanadaプラス」限定の特別寄稿!


【今週のサンモニ】バンカーバスターは何を破壊したのか|藤原かずえ

【今週のサンモニ】バンカーバスターは何を破壊したのか|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。