昨年10月のハマスによるイスラエル攻撃をきっかけにヘイリーの存在感が増したことは前回の記事(ハマス奇襲攻撃を予言したトランプ、評価が急上昇|石井陽子)で書いた。
一方で、ラマスワミはこの出演後の1月15日に撤退を表明し、1月21日にはデサンティスもそれに続いて撤退した。現在、共和党内ではトランプとヘイリーの一騎打ちになっている。
ヘイリーの存在感の高まりの背景には、もちろんメディアによる報道がある。報道の仕方について、同番組内でカールソンはこう言及している。「ニューヨーク・ポスト、デイリー・ビースト、CNN、あらゆるケーブルニュースチャンネルがニッキー・ヘイリーを宣伝している。(だが)彼女の世論調査の数字は、それほどのレベルの熱狂を表していないようだ。共和党の有権者はそれほど彼女を愛していないが、メディア全体は彼女を愛している」
実際、ヘイリーはCNNやニューヨークタイムズなどでの露出度が高いことが確認出来る。これを受けてラマスワミは、「世論調査の多くでさえ、彼女の実際の上昇を偽って宣伝していると思う」と反応した。
元首席戦略官が「ニッキーヘイリーは毒蛇」
前掲記事でも触れたように、ラマスワミはヘイリーへの批判を根気強く行ってきた。選挙戦中、トランプに忠実に立ち回ってきた甲斐あって、選挙戦撤退後はトランプ支持を表明するだけでなく、応援演説にも入るようになっている。演説をした後には、「VP! VP!(副大統領!副大統領!)と聴衆から掛け声が上がるほどだ。トランプと抱き合い、笑顔を見せるラマスワミには余裕すら感じる。トランプ支持者として、ヘイリー批判を継続しているのだ。
一方でヘイリーを副大統領候補にすべきではないという激しい声がトランプ支持者の中にある。私自身昨年12月に東京で2日間にわたって交流し、動画も一緒に撮影したことのある元アメリカ海軍情報士官のジャック・ポソビエックが、トランプ政権の初期に首席戦略官を務めたスティーブ・バノンと行った対談が非常に強烈だ。その対談の中でバノンは次のように語っている。
「我々には大きな戦いがある。それは春にあるだろう。(彼らは)ニッキー・ヘイリーにチャンスを与えようとする。『トランプには女性が必要だ、ヘイリーはバランスが取れている。彼女は共和党内のネバー・トランパー(トランプを絶対的に拒否する人々)の内の15%をまとめることができる』と言うだろう。ニッキー・ヘイリーが我々の政権に入ってくれば、それがどのような立場であれ、我々の戦いは失敗に終わるだろう。彼女は毒蛇で、いったん政権に入れば、首相として政権を運営しようとするだろう。ブッシュにとってのディック・チェイニーのようになろうとするだろう」
ヘイリーへの激しい拒否感がわかる言葉だ。バノンは今回の選挙を、共和党対民主党の党派間の戦いではなく、「ポピュリスト・ナショナリズム対エリート・グローバリズム」の戦いだと主張しているほどだ。