尹錫悦は、日本に対しても破格なプレゼント攻勢に出ている。 いわゆる徴用工を巡る2018年の韓国最高裁判決と関連して、「第3者返済」という日本企業ではなく韓国企業が肩代わりに損害賠償金を支払う方式を選んだ。 しかし、これも尹錫悦のこれまでの歩みを見れば、全く辻褄が合わない。
朴槿恵政権は徴用工問題について、韓国の司法府が日本企業の損害賠償を認めてしまえば、韓日関係が危機を迎える恐れがあるため、外交的解決策を見出すまで判決を最大限遅らせる努力をしてきた。 これを司法壟断と批判し、当時の梁承泰最高裁長官など判事らを拘束させた人物こそ、まさに文在寅政権のソウル中央地検長だった尹錫悦だ。
ところが、尹錫悦は自分が大統領になった途端、外交的解決策を模索するとして司法府に日本企業の資産現金化を遅らせ、結局は韓国企業が代わりに金を払わせる方策を示した。 過去の朴槿恵と裁判官を拘束した基準に照らせば、尹錫悦本人こそ拘束されるべき司法壟断であろう。
尹錫悦はまた大統領候補者時代に、「偽の慰安婦」イ・ヨンスに「日本の謝罪を必ず引き出す」と豪語したこともある。 尹錫悦は当初、徴用工問題も慰安婦問題もまともに勉強したことがなかった。 慰安婦問題でそのように豪語してしまったため、今も尹錫悦は慰安婦問題では何ら言及できずにいる。 徴用工問題も原告らが「なぜ私は日本企業ではなく韓国企業の金を受け取らなければならないのか」として抗議しており、事実上何の解決もなされていない。
文在寅のように露骨に反日感情を煽る大統領に比べて、日本側の立場では尹錫悦が韓日関係の改善には役立つ大統領だと評価することもできる。 しかし、韓国で反日感情は厳然と存在する。 これを克服するためには、真実を韓日両国の国民同士が意思疎通を図る努力がまず何よりも必要である。このような両国の国民の意思疎通努力を後押しする形ではなく、大統領一人が自らの支持層の心をつかむためだけに日本にプレゼントをばら撒けば、韓国内の反日感情はさらに高まる。そして、そうした支持層の崩壊で尹錫悦政権が倒れた後、どうなるか。文在寅のような強力な反日路線の政権が再び誕生することは目に見えている。
捏造した容疑者は尹錫悦大統領とナンバー2だった韓東勳法務部長官
冒頭で言及したように、筆者は「朴槿恵弾劾用タブレット捏造事件」を取材し、尹錫悦がソウル中央地検長時代にOECD主要先進国のジャーナリストとしては初めて、裁判もなしに事前拘束された経験をもつ。その後、JTBCが報道した「第1の崔順実タブレット」以外に、崔順実の甥チャン・シホが尹錫悦の特検第4チームに提出した「第2の崔順実タブレット」に対しても調査を行った。 筆者は昨年夏頃に「第2の崔順実タブレット」の内部データを裁判所を通じて確保し、このタブレットも捏造された事実を最終的に確認した。状況から見て捏造した容疑者は、かつて特検第4チームのチーム長だった尹錫悦大統領とナンバー2だった韓東勳法務部長官だとみるのが自然だ。筆者はあの2台のタブレットに対する捏造問題を扱った著書『私はその年の冬、彼らがしたことを知っている』を昨年12月に出版し、そのことを詳述した。 そして出版直前にハン・オソプ大統領室状況室長に会った。 筆者は16年間保守陣営で活動してきたため、尹錫烈政権に参加する保守派とも交流がある。 李明博政権当時、大統領府広報局長、現尹錫悦政権では大統領室状況室長を務めているハン・オソプもその一人だ。 ハン室長は筆者に「それでも保守政権なのだから、私たちが力を合わせて成功させなければならないのではないか」と説得した。
しかし筆者は「尹錫悦大統領と韓東勳法務部長官は、朴槿恵を弾劾、拘束させるために決定的な証拠を捏造した犯罪者たちだ。 そして、文在寅政権で要職に就いて保守派200人余りを拘束し、猟犬の役割を果たしてきた。 このような人間が保守の原則をきちんと守り、国家のために献身できるだろうか」と抗弁した。
これに対してハン室長は「国内のどのマスコミもタブレット捏造を報道しない」と断言した。 筆者は「それなら米国、日本など海外メディアで発信する」と応酬した。