尹錫悦は政権発足直後、文在寅政権下で起こった「北朝鮮漁民強制送還事件」、「公務員越北操作事件」について捜査。保守陣営では「尹錫悦が文在寅を拘束させる」と歓呼した。文在寅自身も「私が最終決定権者だったので、私を捜査せよ」と開き直った。 しかし、尹錫悦政権下の検察は文在寅に対する捜査自体を行わず、事件を終結させた。 最近、尹錫悦政権下の検察は、文在寅政権の不動産関連統計操作事件を捜査中だが、この事件ですら“尹錫悦の検察”はなぜか「文在寅が関与した証拠がない」として文在寅に免罪符を与えている。
結局、保守陣営では尹錫悦が文在寅を断罪することを諦める雰囲気だ。
李在明拘束に失敗、金大中と盧武鉉を尊敬
尹錫悦は「人に忠誠しない」という言葉をよく口にした。 しかし、尹錫悦の周辺の人々は「尹錫悦こそ人に忠誠する人間」だと評する。 このような尹錫悦の特性上、自分をソウル中央地検長、検察総長に任命したことはもちろん、大統領になる過程で一定の力を与えた主君である文在寅を攻撃するはずはないだろう。
尹錫悦は文在寅に触れることはできないので、次の攻撃のターゲットに掲げた人物が現「共に民主党」代表の李在明だ。 しかし、“尹錫悦の検察”は「政治報復」という無数の批判を受けながらも、この1年間、300回以上の家宅捜索まで行ったが、結局、李在明を拘束することに失敗した。 多くの保守勢力が変節してまで、文在寅政権下の検察総長、尹錫悦を大統領にしたが、結果的に左翼清算の成果は皆無だ。
検事時代の尹錫悦は、「金大中と盧武鉉を尊敬する」という言葉をよく口にした。 だから文在寅政権で要職に就くことができたのだろう。 特に盧武鉉についてはある放送で「あんな人は他にいません」という韓国の大衆歌謡を歌ってまで盧武鉉に対する尊敬の気持ちを表していた。
一方、保守陣営の大統領として知られる李承晩、朴正熙に対しては、大統領になる前は特に発言をしたことがない。実際、尹錫悦は大統領に当選した後も、保守陣営では「共産主義者の内乱」と分析する1980年の「5·18光州事件」、1948年「4·3済州事件」に対して、あまりにも簡単に民主化運動だと規定し、参拝までした。 尹錫悦は5·18を称える歌「君のための行進曲」も運動家たちと一緒に歌ったりした。この問題は李明博や朴槿恵元大統領らも非常に慎重に扱った問題だ。
当初、このようなアイデンティティの問題で政権初期には保守支持層は尹錫悦に対して疑問を抱いていた。 そして、昨年6月には24%まで支持率が下落した(韓国ギャラップ調査)。 すると尹錫悦は主に李明博勢力が中心のニューライトと手を握り、共産主義者問題を取り上げ、「理念が最も重要だ」として理念闘争を煽った。そのため尹錫悦に再び保守層の支持が集まり、今は30%台前半の支持率を維持している。 それでも歴代大統領の中では最低水準の支持率だ。