保守の仮面
2023年10月11日のソウル江西区長補欠選挙で、尹錫悦大統領率いる与党「国民の力」から立候補したキム・テウ氏が、野党「共に民主党」のジン・ギョフン候補に17%差で大敗した。今回の補欠選挙は、もともと江西区庁長だったキム・テウ氏が2023年5月、韓国最高裁で公務上秘密漏洩罪で有罪判決を受けた後、職を失って行われた選挙だった。
ところが驚くべきことに、尹錫悦大統領は自身の権力を使いわずか3ヶ月でキム・テウ氏を恩赦し、与党はキム氏を候補者として公認したのだ。これに対し国民は、尹錫悦大統領の法治を軽視する態度と独断的な国政運営に怒り、政権審判投票を行った。
来年(24年)の総選挙を6ヶ月後に控えたソウル地方選挙で、与党が17%差で大敗し、尹錫悦を支持していた韓国の保守陣営は大きく揺れている。このままでは2020年の総選挙で現野党である「共に民主党」が180議席、現与党が103議席だった結果が、そのまま繰り返されるのは目に見えている。
このため、韓国の代表的な保守系新聞である朝鮮日報、東亜日報、中央日報は連日、尹錫悦大統領の国民への謝罪と反省を促している。そして、尹錫悦を支持していた保守派たちは尹氏がいる限り来年の総選挙の敗北は確実だとして尹氏の退陣まで要求している。
筆者は尹錫悦政権の発足当初から、総選挙前に尹氏は保守派に見放され、退陣にまで追い込まれると警告してきた。なぜなら、そもそも、尹錫悦は左派の文在寅政権下で検察総長まで上り詰め、保守人士200人余りを無差別に拘束し猟犬の役割を果たした人物だからだ。このように韓国の保守派を壊滅させた人物を保守派が支持して大統領に据えたのだから、うまくいくはずがない。
実際、保守派の支持を得るために無理やり保守理念を強調していた尹錫悦は、先の補欠選挙の敗北後、「イデオロギー論争をするな」と180度態度を豹変させている。権力獲得のためだけに使っていた保守の仮面を自ら脱ぎ捨てたといえる。