台湾有事はこうして起こる|山崎文明

台湾有事はこうして起こる|山崎文明

「中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することである」―アメリカの最新研究が今話題を呼んでいる。一方で、中国による機雷敷設によって台湾有事が勃発するシナリオも現実味を帯びる。もし台湾海峡が封鎖されれば日本はどうなるのか。報じられない「台湾有事の盲点」を緊急分析する。


機雷戦に適した台湾海峡

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台湾海峡は浅く狭いため、機雷を敷設するのに適した地域とされている。台湾海峡は、長さ約300キロメートル、幅は平均180キロメートル、最も狭いところで130キロメートルである。水深は平均60メートルで、最も深いところでも100メートルしかない。海峡の航路は、水深20メートル、幅8キロメートルの帯状に集中している。こうした地形と現在の米軍の能力を考えると、空中投下型機雷が使われることが想定される。

クイックストライク(Quickstrike)機雷と呼ばれる空中投下型機雷は、MK80シリーズの500ポンド弾、1000ポンド弾、2000ポンド弾を中心に構成された機雷群である。これらの機雷は音響、水圧、磁気に反応する複数のセンサーを持ち、潜水艦や水上艦を探知でき、あらゆる深さで機能するといわれている。

海底に設置された機雷は、上空を通過する船舶の擬似信号では掃海できず、個別に除去する必要がある。実際に台湾海峡に敷設される機雷は、クイックストライク機雷の中でも最も装薬量が少ない250ポンド弾であるMK62が使用されるようだ。250ポンド装薬量の機雷でも、大きな損害を与えることなく、海峡封鎖には十分な効果がみこめることと、小型機雷は数多くの敷設が可能で、海峡封鎖というミッションにかなっているためである。また、実際に中国の船を沈め、犠牲者を出すことは、政治決着の可能性を低くするからである。

米軍の機雷封鎖シナリオ

MK62クイックストライク機雷を搭載できる爆撃機は、B-1B、B-2、B-52である。6機のB-1B、3機のB-2、20機のB-52を出撃させた場合は、最大3880個の機雷を敷設することができるが、台湾海峡を封鎖するには、このような大規模の航空艦隊を使用する必要はない。

一方、B-2やB-52は核兵器を搭載できるため、中国側が核攻撃を受けると判断し、敵対的反撃に出る可能性があることから、B-1B爆撃機が使用されるだろう。配備可能なB-1B爆撃機は6機で、最大840個の機雷を敷設することができる。これらの爆撃機は、日本とグアムの空軍基地の範囲にあり、無給油で台湾海峡を往復することができる。

米軍の爆撃機は、これまでにも幾度となく台湾海峡の中国の防空識別圏を通過しており、中国側は、これまでと同様に武力を誇示していると見るはずである。仮に中国が銃撃してくることがあれば機雷戦を中止し、中国の行動を非難し、国際的な支持を得ることができる。

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