中国の「覚えめでたい」岸田首相
お盆休みに新型コロナウイルスに感染した岸田首相に対して中国の習近平国家主席は8月22日、「感染を知り、心からお見舞い申し上げる。早期回復を祈っている」とお見舞いのメッセージを発出。日中国交正常化50年を今年迎えることに触れ、「新時代の要求に合う中日関係の構築を共に推進したい」と強調した。
そして翌23日には、中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けておよそ2年半前から停止していた日本人留学生の受け入れを再開した。
中国は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて昨年までは厳しい水際対策を取っていたが、今年に入ってからはビジネス目的などの来訪者の受け入れを徐々に再開させていた。
中国の一連の対日宥和姿勢は、何に起因するものなのか。8月4日に弾道ミサイルを大量に打ち込んだ挙句「日本の主張するEEZは無効」などと主張した8月上旬までは、日本に対する激しい怒りを余す所なく表現していたのだ。
中国がわずか2週間で態度を豹変させたのは、弾道ミサイルの連射など中国の激しい軍事的恫喝に対して岸田首相が毅然とした対応をせず、まるで属国や植民地のように沈黙を守ったためだという見方が急速に広がっている。
日中両政府の間では今、9月29日の日中国交正常化記念式典の際に何らかの形で習主席と岸田首相の首脳会談が模索されているという。岸田首相が中国の顔色をうかがう目的で会議の招集を見送ったのだとすればそれは絶対に許されない判断だ。
岸田首相は、目先の記念式典や首脳会談のために、与那国島の漁民のみならず、日本人の生命と日本の国土を危険に晒したのだ。
安倍元首相の遺志を踏み躙る岸田首相
国家安全保障会議は、暗殺された安倍晋三元首相が第一次政権の頃から温めていたもので、第二次政権下の2014年に正式に発足した。
アメリカ・大統領府(ホワイトハウス)のNSC(国家安全保障会議)に対応する機能が与えられた国家安全保障会議は、日米同盟を最高レベルで維持強化する機能も果たしてきた。そして、弾道ミサイル発射や中東情勢、ウクライナ戦争など世界の安全保障環境の変化に対する日本政府の姿勢を内外にいち早く示すという意味でも重要な機能を果たしていたのである。
しかし、今回11発中5発の弾道ミサイルをEEZ内に打ち込まれても会議を開かなかった以上、今後は会議を開催するハードルが極端に高くなってしまった。今後はどんなミサイルがどこに何発打ち込まれたら、国家安全保障会議を開催するのか。
岸田首相の媚中姿勢は、林芳正外相の続投で明らかになった。そして安倍元首相の肝煎りで発足した安全保障の最高レベルの司令塔である国家安全保障会議を骨抜きにした。
これでもまだ、岸田政権を評価する評論家がいることには驚愕を禁じ得ない。
安倍元首相暗殺後ことあるごとに「元首相の遺志を引き継ぐ」と述べていた美辞麗句とは裏腹に、岸田首相は安倍元首相が命を賭して築き上げて来た「日本を守る決意とシステム」を次々と破壊している。