【橋下徹研究⑤】独断で日本を一帯一路に引きずり込んだ橋下徹|山口敬之【永田町インサイド WEB第5回】

【橋下徹研究⑤】独断で日本を一帯一路に引きずり込んだ橋下徹|山口敬之【永田町インサイド WEB第5回】

「中国の電力産業が、西側先進国に作った初めての発電所であり、一番最初に利益を生み出したプロジェクトも大阪です」「我々が黒船ではなく、紅船であることを示しています」と上海電力日本株式会社の刁旭(ちょう・きょく)社長。上海電力を咲洲メガソーラーにステルス参入させた「橋下徹スキーム」が、日本進出を狙う上海電力にとってどれだけ大きな恩恵をもたらしたのか。


「紅船」という言葉に込められた本音

このインタビューは、橋下徹市長によって上海電力がいかに大きなメリットを享受したかを端的に示している。

▶︎登記からわずか5か月で開業
▶︎西側先進国で初の進出事例
▶︎最初に利益を上げた

そして注目すべきなのは上海電力の社長の「黒船ではなく紅船」という表現である。
 
「黒船」とは、言うまでもなく1853年に浦賀に現れ明治維新のきっかけを作ったペリーの蒸気船のことだ。中国人が日本人に対して「我々は黒船ではなく紅船である」と言う時、そこにはいくつかの意味が込められている。

まず上海電力の進出は「不吉な黒ではなく慶事の紅」であるとして、あくまで日本にとって喜ばしいことなのだと、上目線で恩を着せる意図である。もう一つの重要な意味は中国国旗の紅、すなわち中華思想と共産主義を象徴する「紅」だ。

中華思想とは、中国こそが世界で最も先進的な文化の中心地であり、周辺国は未開の蛮族で中国から文化・文明の一部を下賜してもらうことで何とか生活しているという考え方だ。

そして、中国共産党によって指導された現代中国からの恩恵を、東夷(東の野蛮人)たる日本に施してやろうというのが「紅船」という言葉に込められた本音だ。

日本人からすれば失礼千万な話を臆面もなく語る刁旭なる上海電力日本の社長の傲岸な姿勢の是非はさておき、たかだか2.4MWに過ぎない咲洲メガソーラーなど、いくつかの売電事業を手がけているだけの中国企業が、日本の歴史を変えた黒船や、中華思想や共産主義を象徴する紅船に自社の事業を準(なぞら)える、その自信はどこからくるのだろうか。

しかし、この刁旭社長の「暴言」は、単なる大言壮語ではなかった。習近平直々のプロジェクトだからこその自信の表れだったのである。

「一帯一路」にビルトインされた日本

中国が現在世界中で推進している「一帯一路構想」は、2013年9月7日、習近平がカザフスタンの首都ヌルスルタンで行った演説で「シルクロード経済ベルト」構築に端を発する。その習近平演説10日後、2013年9月17日に日本で設立されたのが、他ならぬ上海電力日本株式会社なのだ。

その後、一帯一路は習近平指導部肝入りの重要政策として、アジア、中東、欧州、アフリカ各国で強力に推進されている。中国政府は一帯一路に関するウェブサイトを複数立ち上げているが、このうちエネルギー分野を扱っているのが「一帯一路能源合作网」である。

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