【橋下徹研究⑤】独断で日本を一帯一路に引きずり込んだ橋下徹|山口敬之【永田町インサイド WEB第5回】

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「中国の電力産業が、西側先進国に作った初めての発電所であり、一番最初に利益を生み出したプロジェクトも大阪です」「我々が黒船ではなく、紅船であることを示しています」と上海電力日本株式会社の刁旭(ちょう・きょく)社長。上海電力を咲洲メガソーラーにステルス参入させた「橋下徹スキーム」が、日本進出を狙う上海電力にとってどれだけ大きな恩恵をもたらしたのか。


世界中で混乱と軋轢を呼んでいる一帯一路

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中国が強力に推し進めている一帯一路だが、その個別プロジェクトは多くが暗礁に乗り上げている。
大規模プロジェクトを短期間で無理やり実施しようとする、地元経済を無視した覇権主義的手法によって、受け入れ国との深刻な軋轢に進展しているのだ。

そして、透明性の欠如および地元の利害関係者の関与不足により状況が悪化している。
簡単に言えば「中国の中国による中国のための事業」「地元のためにならない」からこそ、各地で軋轢を生んでいる。

アジア問題に強いアメリカのシンクタンク「アジア社会政策研究所」が2019年6月にまとめた報告書を読むと、中国の一帯一路における「本当の狙い」がクッキリと浮かび上がってくる。

「前倒しの完成を求め過ぎると、地方自治体や利害関係者といった主要な関係者等がないがしろにされ、プロジェクトの利点、目標、費用、影響を適切に評価する機会が失われる」

「契約の締結を急ぐあまり初期段階を強引に進めると、透明性の低下、汚職、国民の疑念や誤解が発生し、プロジェクトの実行可能性が低下することで、全体的なリスクが高まる」
と、一帯一路事業そのものの危険性をはっきりと指摘している。

この結果、バングラデシュ、ビルマ、マレーシア、モルディブなどの国々では以前に合意した一帯一路プロジェクト条件の見直しや再交渉が発生しており、工事自体が中止または縮小される事例も存在している。

また、インドネシアやマレーシアといった国々は、大規模な一帯一路鉄道プロジェクトからの撤退や再編を余儀なくされているが、中国から数千億円規模の賠償金を請求されるなど、袋小路に陥っている。

多くの国々がいま中国との一帯一路の大規模プロジェクトの見直しを余儀なくされているのは、「最初は『友好』を標榜しているが、結局は中国の覇権主義の本性が剥き出しになり、受け入れ国の主権と経済をリスクに晒す」からに他ならない。

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