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山岡鉄秀 プロパガンダ映画『主戦場』の偽善
ミキ・デザキと名乗る青年
いまから2年ほど前、ミキ・デザキという上智大学の院生を名乗る青年が、保守論壇でお馴染みの言論人にアプローチしてきた。「慰安婦問題に焦点を当てたビデオドキュメンタリーを作りたいから取材させてほしい。修士修了プロジェクトです」というのだ。
デザキ氏のメールのひとつにはこうある。
「慰安婦問題をリサーチするにつれ、欧米のリベラルなメディアで読む情報よりも、問題は複雑であるということが分かりました。慰安婦の強制に関する証拠が欠落していることや、慰安婦の状況が一部の活動家や専門家が主張するほど悪くはなかったことを知りました。私は欧米メディアの情報を信じていたと認めざるを得ませんが、現在は、疑問を抱いています。(中略)
大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります。また、これは学術的研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」
アプローチされたのはケント・ギルバート、櫻井よしこ、藤岡信勝、杉田水脈、山本優美子、テキサス親父ことトニー・マラーノ、テキサス親父事務局の藤木俊一などの諸氏。全員、デザキ氏の言葉を信じて協力した。中立公正なドキュメンタリーが作られると期待して。
そして時は流れ、2019年3月27日、私は渋谷にある小さな映画館に向かっていた。デザキ氏の映画の試写会があると聞いたからだ。なんでも、デザキ氏の取材依頼を受諾した前出の人々は全員が後悔しているという。デザキ氏の映画が期待に反して、「新たな慰安婦プロパガンダ映画」であることが判明したというのだ。
何があったというのだろうか?前評判では、慰安婦性奴隷説推進派と反対派の双方から公平に意見を聞くということだった。推進派からは、吉見義明氏、戸塚悦朗氏、林博史氏、中野晃一氏、植村隆氏などの名前が見える。さらに韓国の挺対協代表のユン・ミヒャン氏、『帝国の慰安婦』を上梓して起訴されたパク・ユハ氏の名前まで挙がっている。これだけの人々が出演しているのだから、何があったのか、どんな映画になったのか、確認する必要がある。その映画のタイトルは『主戦場 The Main Battleground of The Comfort Women Issue』。