猫の点呼を、と思ったら……
その日、太郎はこつぜんと姿を消した。わが家の2階から、跡形もなく。私が庭で太郎を拾い上げてから、ひと月と8日目、朝10時のこと。
しばらくたってそのことに気づいた私は、それでもさらにしばらくの間、事態がうまく理解できなかった。だって、いったいどこへ行けるというのか?
この日は丸一日、ちょっとした内装工事が入ることになっていて、私はやってきた業者さんの対応をしたり、ついでに押し入れの整理もしておこうなどと考えてばたばたしているうちに、太郎のことがすっかり後回しになっていたのだった。
ノラ猫の両親から生まれた太郎は、推定生後3ヶ月。基本的にはまだ私の部屋に入れている。それでも少しずつ、先輩猫たちと過ごす時間を増やし始めていた。太郎の方も隙あらば自分の部屋を飛び出して、兄さん猫に飛びついたり、椅子や机によじ登ったりして遊びたいと毎日うずうずしていたのだ。
そうやって2階の部屋でみんなと過ごしているところに、いきなり知らない人間が何人もドカドカ入ってきたのである。びっくりするなという方が無理なのだ。私がようやく、そうだ猫の点呼をしておこう、と思ったときにはもう遅かった。タマ、キキ、ココ、リスベット……。あれ? 太郎は??
猫の入れるあらゆる隙間をのぞいてみても、そこには見慣れた大きな猫たちしかいない。いやいや、太郎はまだ体が小さいから見つからないだけなのだ、と自分に言い聞かせる。
「あのう、猫、見ませんでした……よね?」
その時は1階で作業していた業者のTさんに、遠慮がちに聞いてみる。
「えっ。いないんですか?」
「うーん、1匹見えなくて……」
「ええっ」
フリーズするTさん。築年数が古くてあちこちガタピシしているわが家には何度も出入りしているから、太郎を含むうちの7匹の猫たちが完全室内飼いであることをよく理解していて、うっかり飛び出してしまわないよう、これまでも細心の注意を払ってくれていたのだ。だから彼のいる方面は鉄壁で、猫の子1匹這い出す隙もないことは信頼できる。
だからこそ心配をかけたくなかったのだが、いないのだから仕方がない。こうなったらどんな藁にもすがりたい。
さっきまで先輩猫たちといっしょに朝食を食べていたのに

