永田町マニアの国会記者
学校で習ったはずの政治や国会の仕組み。だが、SNSを見ていると俄か知識で間違ったことを書き込んでいる人も散見される。
例えば「閣議決定」。議員が文書で提出した質問主意書に対して、内閣が回答義務を果たすために閣議決定するものも含まれるのだが、時に前段を理解していない人も多いのではないだろうか。
例えば2017年に、安倍内閣は「総理夫人は私人である」とする閣議決定を行っている。これは野党から提出された質問主意書に答えたものだったが、「そんなことまで閣議決定するのか!」との非難めいた声は当時SNSで多く見られた。
このように、日々流れてくるニュースに対してSNSで自説を発信する人はこの15年のうちに激増したが、一方で「そもそも閣議決定とは? 質問主意書とは?」といった基礎知識に対する認識が深まったかと言えば必ずしもそうではない。与党であれ野党であれ批判したいという気持ちが先に立って、基本的なことを見落としてしまうのである。
せっかくSNSでモノを言うなら、国会の仕組みや議員のあり方について、基本的なところは押さえておきたい。澤田大樹『永田町の人をウォッチしてみた――よくわからない国会議員の仕事』(カンゼン)はそうした思いに答えてくれる。
TBSラジオで国会担当記者の澤田氏は、「永田町マニア・議員オタク」を自称する国会ウォッチャーでもある。ライター・宮原ジェフリーさんと放送しているポッドキャストの番組名は「セイジドウラク」。生活や命に直結する政治ではあるが、もう少しエンタメ的に楽しむ切り口もあっていいのではないか、それが有権者と政治の距離を近づけるのではないか……という思いが込められているようで、そのスタンスは本書からも伝わってくる。
衆院議員だけが「代議士」と呼ばれる理由
「となると、あくまでも入門書で、若者向けなんじゃないの」と思う向きもありそうだが、どっこい、〈国会議員の働き方や国会の仕組みがマニアックに面白く学べる!〉という帯文に偽りはない。
イラストも豊富で読みやすいことは確かだが、そこかしこで「へえ、知らなかった」「そういえば考えたこともなかった」と思うような記述に行き当たる。
例えば「代議士」という言葉。議員同士が呼び合う時や、秘書が議員を呼ぶ際に「〇○代議士」と使うことがある。これは国民に代わって議論を交わすことからできた言葉だが、使われるのは衆議院議員に対してのみ。
というのも参議院はもともと貴族院であり「国民の代弁者」ではなかったから。今では衆院と同様に選挙で選ばれているにもかかわらず、「代議士と呼ばれるのは衆院議員だけ」という不思議な慣習が続いているのだという。
あるいは、先にも引いた質問主意書について。与野党問わず何本でも出すことができる質問主意書は、国会の質疑では触れられなかったり、深堀りし切れなかったテーマについて政府の見解を問うのに役に立つ。
ただし、本書によれば〈与野党問わず何本でも出すことができ、「政府からこんな回答を引き出しましたよ!」という国会議員の成果の一つにもなり得〉る一方で、〈無数に出せるため、「そんなことは自分で調べてくれ」と思うような質問もあったりなかったり……。質問主意書が政府の仕事を圧迫しているという指摘もあるよう〉で、やはり問題は中身になってくるのである。

