国家情報院が事実上機能していない状況を勘案すれば、韓国は日本や豪州よりも深刻な中国共産党の浸透・転覆工作に籠絡されている公算が大きい。「5・31地方選挙を控え揺れる仁川チャイナタウン」(「東亜日報」)、「『大切な一票、胸が一杯です』」(「大田日報」)…外国人に投票権を最初に付与した2006年地方選挙当時、韓国メディアの見出しである。あれから15年が経った現在、今年の地方選挙で「中国人有権者」はなんと全国に10万人いる。ソウルだけでも3万5千人でこれは接戦となった時、キャスティングボートを握ることが可能な水準である。韓国の代議民主体制崩壊の危機に至るまで、いかなる機関もいかなるメディアもこの問題の危険性を正しく警告しなかった。これは何を意味するのか。
一部の韓国人は韓国と中国の対等な関係、そして韓国の自由民主体制の存続に対し悲観的な主張をする。特に、中国の市場規模と経済成長を語りながら、中国の世界覇権国化は必然であり、韓国はもちろん人類自体が今後中国に追従しなければ生きることができず、歴史の大勢に従わなければならないと語る。果たしてそうだろうか。彼らは中国に対する大多数の韓国人と、人類の意志を余りに過小評価しているのではなかろうか。
事実、クライブ・ハミルトンは中国共産党の問題以前に長年気候変動問題を研究し、石油文明に対し強い批判を行なってきた学者でもある。石油文明から自由になることと中国から自由になることの中で、果たしてどちらがより容易だろうか。クライブ・ハミルトンは明らかに後者と答えるだろう。実際、人類は現在、国際的連帯を通じて石油文明からも果敢に脱出している。原子力、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)など数多くの試みがなされており、成果を上げている。
環境危機の前で我々が、例えば自動車も喜んで拒否できるなら、なぜ安保危機の前で中国産車両を拒否することが出来ないのか。いかなる基準で考えても、「中共」を拒絶する事が「炭素」を拒絶することよりも容易い。
豪州は、最終的に5G事業でファーウェイを排除することとした。中国と締結した「一帯一路」業務協約も順次破棄している。コロナウィルス発生源に対する調査を全世界で最初に要求したのも豪州である。
南シナ海、新疆ウイグル自治区、台湾問題においても豪州は随時中国に批判的な声を公に上げている。このような豪州を米国はオーカスで大きく応え励ました。
豪州は事実、韓国よりも大きい貿易規模で中国に依存してきた国である。人口も2,500万で韓国の半分に過ぎない。豪州も出来るのに、中国とわずか70年前はもちろん、それ以前から数多く全面戦争を繰り広げ自己アイデンティティを守ってきた経験のある韓国が、なぜ中国に立ち向かうことが出来ないのか理解に苦しむ。今後、韓国こそ「自由の防波堤」を越え「自由の波濤」となり、北京と平壌を一掃する国として全世界のモデルとならねばならない。
『目に見えぬ侵略』と『見えない手』に続き、『豪州と中国戦争前夜』が大韓民国で中国共産党浸透・転覆工作問題に対する議論活性化、そして韓国民の中国共産党に立ち向かう意志高揚の契機となることを期待する。(翻訳/黄哲秀)
1972年、全羅南道木浦市生まれ。 ソウル大学医学部卒業(医学士)。 漢陽大学哲学科大学院卒業(修士)。 自由保守派であり、韓米日同盟を目指す市民団体である自由開拓青年団、自由統一解放軍の常任代表、韓国最大の医師団体である大韓医師協会会長(第40代)を歴任。2022年の大統領選挙では、大統領予備候補に登録し、政界デビューを果たした。