スクープ!中国共産党員機密名簿195万人を入手|山崎文明

スクープ!中国共産党員機密名簿195万人を入手|山崎文明

日本企業にも深く浸透する中国共産党員。今回、漏洩した党員195万人の名簿を詳細に分析したところ、衝撃的な事実が浮かびあがってきた。習近平による「目に見えぬ侵略」は確実に進んでいる。危機感の全くない日本よ、目を覚ませ!


2020年12月、東レの子会社、東レインターナショナルが、数年前から外為法上の許可を得た販売先ではない中国企業に炭素繊維を流出させていたことが明らかになった。  

炭素繊維はコールタールなどの副生成物を原料に高温で炭化して作った繊維で、1959年に日本人が発明したものである。鉄よりも軽くて丈夫なことから航空機や自動車などに使用される材料であるが、軍事転用も可能なため、輸出する際には国の許可と輸出先の企業や使い道を厳しく管理されている。  

今回の事件は、中国の現地子会社および現地社員に取引審査を一任していたことが原因だ、と東レは説明しているが、現地社員が中国共産党員であれば起こるべくして起こった事件である。  

漏洩した今回のデータからも、本気でわが国の安全保障や知的財産を守る気がないことがわかる。 「ナノテクノロジー」の基礎研究を行っている東レ先端材料研究開発株式会社には博士課程を修了した者が2名、大学院卒が11名、大学卒4名、高校卒1名の計18名の上海党支部・共産党員が在籍している。こちらも全員が漢民族である。  

こうした材料研究によって、わが国の費用で中国人に先端技術を研究させ、その成果もまた中国に帰属することになりはしないのか。深刻な懸念を拭い去ることはできない。東レは「子会社に対するコンプライアンスやガバナンス、安全保障貿易管理を会社の優先事項として対応してきたつもりだが、今回の不祥事を防げなかったことは遺憾だ。子会社に再発防止策を徹底させる」とコメントを出しているが、事件は氷山の一角でしかないと思わざるを得ない。  

子会社から中国共産党員を排除しない限り、同じことが繰り返されるのではないか。経済産業省は東レに対して、貿易経済協力局の名前で、行政指導のなかでは最も重い処分として、再発防止策と厳正な輸出管理の徹底を求める警告書を出しているが、警告書だけで済む問題だろうか。政府や企業の本気度、危機意識が問われる。  

なお、「中国共産党上海市対外服務有限公司」は各国の大使館や外国メディアにも中国人の人材を派遣している。こうした実態を政府やメディアはどう捉えているのだろうか。

入国を制限したアメリカ

米国務省は2020年12月2日、中国共産党員への渡航ビザ(査証)規制を厳格化した。中国共産党員およびその家族が取得できるビザは、いままで最長10年有効のビジター用数次ビザだったが、これを一回限りのビザで滞在期間も1カ月に変更された。北京の米国大使館報道官は、声明でこう述べている。

「中国共産党とその党員は、プロパガンダや経済的な威圧など悪質な活動を通じ、米国民に影響を及ぼすために積極的に動いている。中国共産党には、何十年にもわたり米国の機関と企業への自由で拘束されないアクセスを認めてきたが、中国国内で米国民が同じ特権が自由に与えられたことはなかった」  

むろん、米国政府が完全な中国共産党員のリストを持っているわけもなく、ビザ発給時点でビザ申請者が中国共産党員であるかどうかわかるわけではない。したがって滞在期間を制限することはできないが、発覚した時点で違法な入国として捕らえることができるから、中国共産党への圧力となることは間違いない。  

日本政府が同じようなことをしようとすれば、党員リストを待っていることや人権が争点となり、法改正はできない虞(おそ)れがある。しかし、党員リストの有無や人権云々ではなく、中国共産党員に対する牽制を目的とする米国の姿勢を学ぶべきだ。  

今回漏洩した中国共産党員のデータによって、多少なりとも中国共産党の実像が掴めたと言える。日本政府も諜報活動に磨きをかけて中国共産党の動きを捉え、民間企業へもその情報を提供できるようにすべきだ。そのためには、スパイ禁止法や諜報活動が堂々と行えるよう法改正を急ぐべきであろう。  

中国による「目に見えぬ侵略」は、日本でもすでに始まっているのだ。
(初出:月刊『Hanada』2020年5月号)

山崎文明

https://hanada-plus.jp/articles/277

1955年、大阪府生まれ。元会津大学特任教授。78年、神戸大学海事科学部卒業。損害保険会社を経て、83年に米国際監査会社プライスウォーターハウス公認会計士共同事務所入所、システム監査部マネジャーとして大手ITメーカーや大手通信キャリアのセキュリティー監査を担当する。以来、複数のシステムコンサルティング会社、セキュリティーコンサルティング会社で現場経験を積む。2016年度より現職。リサーチ活動においては、「自分の目で事実確認」することを信条に、当事者や関係者に直接取材。著書に『情報立国・日本の戦争』(角川新書)。

関連する投稿


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。