嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

日本政府も外務省もなぜこれを未だに放置しているのか? 書かれてあること全てが嘘の論文を堂々と駐日中国大使館のホームページに日本語で公開した孔鉉佑大使。大使に問う「なぜここまで平気で嘘がつけるのか?」と。「嘘も100回言えば真実になる」ことを許してはならない!


中国憲法は、さらに国民に通信の自由も通信の秘密も保障している。だが、マイク・ペンス米副大統領(当時)が中国はジョージ・オーウェルの世界になったと述べたように、中国国民の行動は徹底的に監視されており、どこに通信の自由があると言えるのか、疑問視せざるを得ない。指摘し始めればキリがない。結論はひとつである。中国共産党政府の言葉は信じてはいけないということだ。  

孔大使はこうした事実に背を向けて、「和を以て貴しとなす」は中華民族の精神だと言う。たしかに、その精神は論語の教えから生まれている。わが国の聖徳太子は、論語をふまえて17条憲法の筆頭に右の条項を掲げた。日本は聖徳太子の時代から現在まで、17条の憲法、同憲法と通底する価値観に支えられた五箇条の御誓文を受け継いで、穏やかな文明・文化を育んだ。私たちは中国から大いに学びつつも、彼らとは真逆の道を歩んだ。  

中国の歴代王朝はおよそ例外なく血塗られた悲劇のなかで交替し、人民も殺戮された。和を大事な要素であると教えた論語の精神は、中国では歴史上も現在も守られていない。論語の教えが守られていれば、貧困から脱すべく都市に流入して真面目に働く幾千万の農民工の人々が人間と思えぬ扱いを、一般の中国人や政府から受け続けることはなかったのではないか。現在進行中の香港の人々に対する徹底した弾圧もなかったはずだ。

「和」とは、皆が納得する了解の仕方である。国民の了解、社会の了解は中国共産党政権下の中国のどこにあるのだろうか。もし、そのような和があれば、習主席はなぜ独裁専制的な政治姿勢を強めなければならないのか。習主席はなぜ21世紀の毛沢東になろうとしなければならないのか。

豊かになれば民主化するという美しい誤解

米中関係が、現在最悪の状況にあることを孔大使は認めている。そのうえで、原因は米国にあると断じている。米国が中国に「難癖をつけ続け」 「公平な国際貿易ルールを壊し、自由なグローバル市場環境を損な」ったからだとしたうえで、中国が仕掛けたものはひとつもないと言い切った。  

しかし公平に見れば、トランプ米政権(当時)の中国に対する怒りは、中国が自らの行動で引き起こしたにすぎない。摩擦のタネを撒いたのは中国である。  

かつて自らを「パンダハガー」と呼んだ米国随一の中国問題専門家、マイケル・ピルズベリー氏のことは前述した。氏は、中国が豊かになれば米国のように民主化するという美しい誤解が、長く米国人の間で信じられていたことを具体的に語っている。米国人が信じた美しい誤解とは、中国は米国には敵対しないという一点に凝縮されるだろう。  

中国人の発信し続けたメッセージは、たとえば中国はあまりにも貧しく米中間の差は大きい、中国はむしろ米国の支援なしには潰れるといった内容だった。こうしたことを中国側は米国側に信じ込ませた。米国はすっかり騙され、国民に対する十分な説明もないままあまりに多くのものを中国に与え続けた、とピルズベリー氏は述懐している。  

米国は最大限与え、中国は全てを受けとった。そこに留まらず、中国はさらなる決定的な情報や技術まで欲した。さすがにそこまで米国が提供しないとき、中国は盗み取った。これは米中外交の中枢に約半世紀も身を置いてきたピルズベリー氏の実感である。  

中国は米国にやがて彼らも民主国家になると信じ込ませたが、実はそうではないのではないかという疑念をピルズベリー氏が最初に抱いたのは、1997年だったそうだ。ニクソン政権下の69年以来、歴代政権に中国支援の必要性を説き、米政府の政策に影響を与えたこの専門家は、30年間、丸々騙されていたのだ。  

しかし、ピルズベリー氏が本当に覚醒するには、それからさらに20年近い歳月が必要だった。氏が先述の書を発表し、自分は中国人に騙されていたと告白したのは、2015年になってからである。

ピルズベリー氏も米国人も、中国を信じたかったのだ。中国を助けてやれば、彼らは米国のような国になり、米国のよきパートナーになるという信頼を壊されたくなかったのである。米国人をそのような気持ちにさせた中国の情報工作は、それほど巧みだったということでもあろう。

世界に広がった対中支援

米国の対中支援が本格化し、その流れが世界に広がったきっかけは2001年、中国の世界貿易機関(WTO)加盟だったと言ってよい。WTO加盟は中国の悲願だった。中国はどうしても経済成長を加速しなければならない。強い経済が最強の武器であることを、改革開放を実現した鄧小平は知り抜いていた。  

WTO加盟交渉を担ったのは鄧小平の若い同志、朱鎔基氏である。朱氏は鄧小平同様、毛沢東に粛清されて約20年間、死と隣り合わせの厳しい時代を過ごした。試練を不屈の精神で生き抜いた朱氏は91年から2003年まで、副首相そして首相としてWTO問題に取り組んだ。  

加盟交渉の最終段階、1999年4月の訪米で、朱氏は米政財界の重鎮たちに招かれ講演した。  

レーガン政権の国務長官を務めたアレクサンダー・ヘイグ氏は、朱氏を紹介するなかで述べている。

米中関係は72年のニクソン訪中以来、歴史、文化の違い、またユーゴスラビア問題など政治的視点の違いはあるが堅実に発展してきた。大事なことは中国を色メガネで見ないことだ。中国の真実を事実を通して見ることだと強調し、「高く立てば遠くを見渡せる」という江沢民国家主席(当時)の言葉を引用して、米中関係を長期的視点で見ることが大事だと紹介した。  

それでも米国内には、中国がいずれ米国の脅威になるのではないかという懸念があった。それを質したのが、ブッシュ大統領(父)の安全保障問題補佐官を務めたスコークロフト氏だった。氏は、台頭した中国は米国の敵になるかと尋ねた。これに対して、朱氏が長い答えを返した。  

要約すれば以下のようになる。  

中米の国力の差は大きい。中国の核戦力もGDPも、米国とは比較にならないほど小さい。両者の差は何十年も埋まらないが、その間、中国は成長する。中国の成長は大きな市場そのものを意味する。中国の台頭は米国の利益に他ならない。したがって、米国は中国脅威論を中国好機論に変えるべきだ。  

朱氏が展開したのは、まさに鄧小平の「韜光養晦」の理論だった。十分力をつけるまでは頭を低く保て。時間を稼げ。とりわけ米国には中国の真意を悟られるな。こうした中国の国家戦略を絵に描いたように巧みに表現している。朱氏の演説は、いま聞いても力強く自信に満ちている。

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