虚偽満載、騙しの論法
日本記者クラブで会見する孔鉉佑駐日中国大使(YouTube動画より)
駐日中国大使の孔鉉佑氏が、日本における中国に対する物の見方についての論考を駐日中国大使館のホームページ上に日本語で発表した。
(論文「孔鉉佑大使:中国関連の問題を見るいくつかの視点」はこちら)
二度三度と読んで第一に浮かんだ率直な疑問は、もしこの種の一方的かつ虚偽満載で、日本が中国におよそ全ての責任を押しつけるような内容の論文を、北京の日本大使、垂秀夫氏が大使館のホームページに発表したら、どんな騒ぎが起きるだろうかというものだった。中国の一般民衆は怒り狂い、中国外務省は直ちに垂大使を呼びつけて厳重に抗議するだろう。怒った大衆が日本大使館を襲撃するやもしれない。それほど孔大使の主張は一方的で、嘘にまみれている。
このような主張を公開した理由を、孔大使は「日本国内の議論における政治化、感情化の傾向」が日中関係の「正常な発展の雰囲気を壊している」ために、日本人が中国および日中関係について「より全面的、立体的にとらえ、新時代の日中関係のあるべき姿を共に考えられるよう」、物の見方を示したいからだと書いている。
日本人の対中観を、矯正といって悪ければ、正しくしてやりたいというのである。孔大使の考える正しい視点や中国側の主張する事実については後述するとして、それらのおよそ全てが客観的に見て事実に反することを、まず本稿の冒頭で確認しておきたい。
孔大使の論文から見てとれるのは、中国の得意とする騙しの論法である。このような内容を大使たる人物が発表したことについて、当然の疑問を抱かずにはいられない。なぜ孔大使、そして中国人はここまで嘘をつけるのか、と。外交において自国の利益を追求するのは当然である。策略も恫喝も手の内ではあろう。とはいえ、世界中の国々、政治家、研究者、人々が知っている公知の事実を、中国ほど臆面なく修正しようとする国は多くはないだろう。
孔大使の論考を繰り返し読んで、間違いを犯すことはあるにしても、事に当たっては出来得る限り誠実であろうとする日本人の精神とは決して相容れないものを感じざるを得なかった。そして、彼らは本気なのだと改めて実感した。