嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

日本政府も外務省もなぜこれを未だに放置しているのか? 書かれてあること全てが嘘の論文を堂々と駐日中国大使館のホームページに日本語で公開した孔鉉佑大使。大使に問う「なぜここまで平気で嘘がつけるのか?」と。「嘘も100回言えば真実になる」ことを許してはならない!


ウイグル人やモンゴル人へのジェノサイド

具体的に辿ってみよう。1949年10月、中華人民共和国が建国されると、翌年10月にはチベットを侵略した。チベット人の国土は中国に奪われ、ダライ・ラマ法王はインドに亡命して今日に至る。  

内蒙古のモンゴル人のケースを、モンゴル学者で日本国籍を取得した楊海英氏が書いている。1万5000ページに上る『モンゴル人ジェノサイドに関する基礎資料』(風響社)のどの頁にも、モンゴル人が体験した中華人民共和国による虐殺、拷問、搾取の具体例が記されている。楊氏の研究は、そうした悲劇がいまも続いていることを明確に示している。  

新疆ウイグル自治区で強制収容されている100万人とも200万人ともいわれるウイグル人への弾圧、拷問、虐殺はどう説明できるのか。香港はなぜ自由な言論空間を奪われたのか。果敢に真実を伝え続けた「リンゴ日報」の社主、ジミー・ライ氏はなぜ収監されているのか。周庭氏や黄之鋒氏はなぜ、逮捕されなければならないのか。  

孔大使には答えられまい。氏の言葉とは裏腹に、新中国は成立直後からあらゆる意味で侵略・圧政に手を染め続けている。国土、水資源、文化、思想、言語まで、他国、他民族のみならず、共産党に従わなければ自国民からも奪うのが共産党の中国だ。中国共産党は実に醜い政党だと強く実感する。この国は決して信用してはならないとの思いを改めて強くする。

究極の物言えば唇寒しの国

それでも孔氏は、新中国は「和を以て貴しとなす」精神で、70年間、終始平和的発展の道を歩んできたと言う。言葉で書き残しさえすれば、それが本物の歴史になると考えるのが中国人なのか。中華人民共和国憲法を読むと、その想いを強くする。そこには数々の民主的な条文が並んでいる。  

たとえば、中国は人権を尊重し(33条)、言論・出版・集会・結社・行進・示威の自由を保障する(35条)。宗教・信仰の自由(36条)も通信の自由及び通信の秘密も保護される(40条)。高齢者や貧しい国民には社会保険・救済及び医療事業を施す(45条)など、延々と美しい条文が続く。

問題は、どう見てもこれらの条文が文字だけに終わっていることだ。ジャーナリストや編集者が習近平国家主席の政治思想に関するテストを受け、合格しなければ記者証が更新されない中国に、言論の自由があるとは誰も言うまい。  

気の毒なことに、中国人は政治思想テストに合格して記者証を貰えたからといって、自由に報道できるわけではない。「リンゴ日報」の社主、ジミー・ライ氏が拘束されたように、中国共産党の主張に沿う記事しか書けないのである。  

言論の自由がないのはジャーナリズムにおける現象だけではない。共産党政府にはおとなしく従うべし、というのが中国万民に課された共通の原則である。アリババグループ創業者、ジャック・マー氏は国際社会に広く知られる実業家だ。世界的な成功を手にした氏でさえも例外ではあり得なかった。

氏は習近平国家主席の金融規制などを批判しただけで、史上最大規模の資金調達となるはずだったアントの新規株式公開を前日になって取り消された。中国はその国民、13億人全員にとって、究極の物言えば唇寒しの国である。

結論はひとつ、中共政府の言葉を信じてはいけない

関連する投稿


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。