嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

嘘にまみれた駐日中国大使・孔鉉佑氏に反論する|櫻井よしこ

日本政府も外務省もなぜこれを未だに放置しているのか? 書かれてあること全てが嘘の論文を堂々と駐日中国大使館のホームページに日本語で公開した孔鉉佑大使。大使に問う「なぜここまで平気で嘘がつけるのか?」と。「嘘も100回言えば真実になる」ことを許してはならない!


駐日中国大使館HPより

孔大使の主張はおよそ全て事実に反する

隣国中国は経済大国で軍事大国である。彼らは世界制覇の野望をもはや隠さない。孔大使の指摘からも読みとれるように、もはやどの国にも気兼ねせずに、中国の時代が来た、中国が世界の在り方を定義すると、事実上、宣言している。日本はこのような中国共産党政府との距離を近づけすぎてはならない。これ以上中国に接近して搦めとられ、日本の運命を彼らに託さざるを得ない状況を作ってはならない。孔大使の論文は、その意味で日本にとって大きな警告である。  

孔大使はまず問うている。強大になったら、中国は対外拡張をするだろうか、と。そして自ら答えている。「侵略・拡張は中国の政策の選択肢ではなく、そうなることはありえない」と。  

大事なことは、日本のみならず全世界で進行中の事実を孔大使の言葉に照らし合わせて見ることだ。米国のオバマ政権が国際社会への軍事介入に慎重であると見極めた時点で、中国は南シナ海を奪いにかかった。オバマ政権第二期の4年間で、中国は南シナ海の実効支配をほぼ確立した。南シナ海沿岸諸国の抗議も、国際司法裁判所・常設仲裁裁判所の判決も、中国は無視した。そのうえで「侵略・拡張」の道を彼らは今日も驀進する。  

孔大使が否定する「中国の侵略・拡張」は南シナ海に限らない。中印国境におけるたびたびの侵犯はどうだ。ブータンの国土を削り取り続けていることはどう説明するのか。わが国の尖閣諸島を奪おうと、この十年あまり、日々わが国領海、接続水域に侵入し、わが物顔に振る舞っているではないか。

孔大使の主張はおよそ全て事実に反する。世間ではこれを真っ赤な嘘と呼ぶ。

侵略は中華人民共和国の歴史とぴったり重なる

中国は嘘をつく国、という指摘は決して目新しくはない。『China 2049秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』(日経BP)の著者、マイケル・ピルズベリー氏は、長年米国が中国の巧妙かつ国家ぐるみの嘘に騙され続け、米国も西側社会も容易でない状況に追い込まれていることを詳細に書いた。著書ではおよそ全ての事柄を、人名、時期、場所も含めて実名で発表した。  

中国が嘘をつく国であることは、同書によっても他の事例によっても国際社会周知の事実となったが、私は孔大使が嘘をつく祖国を「立派な国」に見せかける理屈を展開していることに注目したい。

それは以下の件だ。「中華民族の『和を以て貴しとなす』精神は今日まで受け継がれて」おり、それゆえに「新中国成立後70年間、中国は終始変わらず平和的発展の道を歩」んできた、という部分だ。  

チベットやモンゴルの人々は、この件を読んで心からの抗議の叫び声を上げるだろう。中華民族が和を尊ぶ民族であったなら、20世紀から21世紀にかけての多くの民族の悲劇、幾百万の、否、幾千万の人々が殺害され、死にも等しい責め苦に喘ぐ不幸はなかったはずだ。中国共産党は、中華人民共和国の建国直後から人民解放軍を他民族弾圧のために派遣した。侵略は中華人民共和国の歴史とぴったり重なる形で進められたのではないか。

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。