背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社刊)を読むのは、私にとっては近年に滅多にない、強烈な読書体験であった。


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たとえば、豪州北部のダーウィン港の99年間の租借権が、中国共産党と密接な関係のある中国企業に売却されたこと。世界最大の石炭積出港であるニューキャッスル港も、中国国営の複合企業体に買収されたこと。そして、豪州における外国籍の不動産購買者の80%が中国人であること。中国企業と中国人は、文字どおり、豪州を買い占めているのである。  

中国人による不動産の買収には、何らかの「特別な意図」を感じさせるケースもある。2015年に、オーストラリア保安情報機構(ASIO)本部から80メートルしか離れていない不動産物件が、人民解放軍とがりのある中国人富豪によって買収された。ここからは、情報機関の出入りを完全に監視できる。

豪州のアナウンサーも中国共産党員、軍隊もターゲット

狙われているのは情報機関だけではない。オーストラリアの軍隊も当然、中国の諜報活動の重要なターゲットである。  

2009年、当時のオーストラリア国防大臣フィッツギボンは、中国系の女性実業家、劉海燕と「非常に親密」な関係にあることをマスコミに暴露された。のちに、この劉海燕は人民解放軍総参謀部第二部とがっていることが突き止められた。  

あるいは、オーストラリアの公共放送であるSBSには北京語放送局があるが、そこで働くラジオアナウンサーの何人かが中国共産党の党員である、と自ら認めているという。  

豪州の著名大学の先端技術を扱う研究部門にも、人民解放軍や中国政府の黒い影が忍び寄っている。

国家的研究プロジェクトに中国人上級研究員

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