背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社刊)を読むのは、私にとっては近年に滅多にない、強烈な読書体験であった。


オーストラリア国防大学には「オーストラリア・サイバー・セキュリティ・センター」という研究機関がある。文字どおり、サイバー攻撃を防ぐための先端技術を研究・開発するための機関だ。中国は何年にもわたって、そこの博士課程に留学生を送り込んでいた。彼らは当然、ここで開発されている技術にアクセスできる。おまけにこの研究センターに勤めている中国人教授は、中国国家安全部所属の実験室と共同研究までやっているのである。  

オーストラリア連邦科学産業研究機構が人工知能(AI)研究のための「データ61」という研究部門を立ち上げて国家的研究プロジェクトを進めていた。この「データ61」に所属の中国人上級研究員の一人は人民解放軍国防科技大学とも深い関係をもっていることが、のちになって分かった。

選挙を動かす中国人票

豪州に住む中国系・中国人はおよそ100万人もいるが、彼らの多くは中国大使館・中国領事館の下で組織化されていて、中国政府の意向を受けて立派な政治活動を展開している。  

たとえば議会の選挙になると、オーストラリア国籍の中国系の人々が大使館によって組織票として動員され、中国共産党に忠実な中国系議員を当選させる。その一方では、中国の気に入らない議員を落選させている。  

豪州に住む人民解放軍の元軍官や入隊経験者は、「オーストラリア中国人元軍人協会」という解放軍OBの会を作っている。彼らは時には、解放軍の軍服に身を包んで軍帽や徽章までつけ、オーストラリアのあちこちの街に集まってイベントを行い、中国の国旗を掲げて軍歌を熱唱する。  

2017年に中国の李克強首相がシドニーを訪問した時、協会のメンバーたちは総出で歓迎しに行ったが、会長は帰宅してから自らの日記に「今日、中国の国旗がシドニーを征服した」と書きつけたという。

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一つの国を丸ごと乗っ取る

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