外務省の事なかれ主義
──山岡さんはオーストラリアで慰安婦像設置を阻止しましたが、山岡さんがかかわっていない他の地域では連戦連敗といった印象です。何が原因なのでしょうか。
山岡 いろいろとありますが、1つは英語での説明力と発信力。海外であれだけ誤った発信がなされているのに、英語で即反論することができない。そもそも、日本政府や外務省が発信する文書の英語表現も、まるで日本がとんでもないことをしでかしたような印象を抱かせるものになっていて、逆効果になっています。私自身、慰安婦問題について海外のジャーナリストの取材を複数回受けましたが、きちんとこちらの意見を述べれば、相手に良心があれば少なくともこちらの言い分を記事にはします。なかには、反論されて電話をガチャ切りしたジャーナリストもいましたが(笑)。
ケント 外務省に任せきりにしてきたのは大きな問題でしょう。これではダメ。彼らは事なかれ主義ですから。90年代から、慰安婦問題が日本にとって大きな問題になっていくことが分かっていただろうに、きちんと対処しなかった。問題が発覚した時に特別調査部隊を組織して、アメリカでも韓国でも調査させてきちんとした報告書を出すくらいの努力は必要でした。それなのに、調べもせずに「ごめんね」と言って済ませようというのはね。ご近所トラブルじゃないんだから、それで済むわけないでしょう。
また、日本では英語を言い訳にする人も多いのだけれど、これも怠慢です。日本人が英語が苦手なら、私のようなネイティブスピーカーを雇えばいいんです。これで英語力の面は解決ですよ。簡単な話です。
山岡 最近は外務省も少し変わってきて、「慰安婦制度は性奴隷ではない。強制連行はない」と自ら主張するようになりました。たしかにそれは進歩ではあるのだけれど、まだまだ舌足らずです。「性奴隷ではないと言うなら何なんですか」と言われると、説明できないんですから。慰安婦制度というものは何であったのか、きちんと日本政府が定義しておかなければ反論のしようがないのです。
日本人に冷たい朝日新聞
──こうしている間も、次々に慰安婦像が海外に設置され、そこに住んでいる在外邦人や日系人たちは肩身の狭い思いをすることになる。これに対して、朝日はどう責任を取るのでしょうか。
ケント 朝日は責任なんて感じないでしょう。謝罪どころか、反省の気持ちなんて全くないんですから。こういう冷酷な新聞は許し難いね。
山岡 そう、朝日新聞は日本人に対して非常に冷酷なのです。韓国人の元慰安婦のおばあさんに対しては「かわいそうだ」 「寄り添わなければならない」と言うのに対し、今回の裁判でもそうだったように、現在、朝日の報道によって被害に遭っている人……つまり、いじめられている子供や、子供を持つ親に対しては、完全に沈黙。全く同情しないし、「彼らが不利益を被っているのは私たちのせいではない」と言い続けている。
「その英語表現がいまなお誤解を生んでいるので、止めてください」と指摘しても、絶対に直さない。「事実と違う情報で日本人が被害を被っています」と言っても、絶対に表現を変えないのですから。
ケント この冷酷さは気になりますよね。日本人に対する上から目線というレベルを飛び越えている。朝日の社是は「日本解体・日本打倒」ではないのですか。だから共通の目的を持つ中国や韓国を擁護する。それどころか、「日本叩き」の材料を中韓に与える。靖国参拝問題はその最たるものです。
山岡 朝日は「『日本打倒』という社是を正式に掲げたことはない」と言うでしょうが(笑)。しかし朝日新聞の日本人に対する冷酷さは、ちょっと異常です。
――朝日新聞は、「愛国心」と聞くと過剰な反応を見せます。かつて天声人語は、〈「日本人としての自覚」 「我が国を愛し発展に努める」といった記述に、ふと立ち止まる。食事中に砂粒をんだような感じがする〉(14年3月7日)とまで書きました。
山岡 朝日新聞は、日本人が愛国心を持つことに対する嫌悪感があるんですよ。これは一体、何なのか。
ケント WGIP(War Guilt Infor-mation Program)、つまり占領政策の影響が残っているのかな。「日本は悪いことをしたじゃないか」と言われたら、条件反射的に謝らなければならないと刷り込まれているのでしょう。