朝日はなぜ英語版で今も慰安婦の嘘を発信し続けるのか|ケント・ギルバート × 山岡鉄秀

朝日はなぜ英語版で今も慰安婦の嘘を発信し続けるのか|ケント・ギルバート × 山岡鉄秀

朝日新聞英語版の慰安婦に関する記事には印象操作がある――。この印象操作中止を求めるべく、集めた署名は1万6千筆あまり。この署名をケントさんと山岡さんが7月6日、朝日新聞に提出し、印象操作中止の申し入れと記者会見を行います。それに合わせ、『月刊Hanada2018年5月号』掲載のお2人の対談を公開いたします。朝日の慰安婦報道の海外への影響、英語表現の解説、朝日新聞訴訟の結果、そして「なぜか日本人に冷たい」朝日新聞の実態に迫ります。


朝日には「製造者責任」はないのか

ケント 分野は違いますが、たとえばアメリカの製造物責任にかかるPL法で言えば、自分たちの作った製品が様々な人の手を介して第三者に渡り、最終的に使用者が何らかの被害を受けたとなれば、製造者は責任を持たなければなりません。しかも、責任はなかったと主張する場合には、製造者の側がそれを立証しなければならない。日本の場合とは全く逆ですね。消費者の側が因果関係を立証しなければならないとなれば、専門知識と莫大な経費が必要で、日本の消費者は守られません。


今回の朝日新聞の訴訟で言えば、主要な原因でないとしても、わずかでも名誉が毀損された可能性が否定できないのであれば、一部であっても朝日の責任を認め、朝日に対して有罪判決を下すべきです。


山岡 被害者が存在することはたしかなのですから、少なくとも朝日の広報が〈これで慰安婦報道を巡り弊社を訴えた裁判がすべて、弊社の勝訴で終結したことになります〉と勝ち誇るようなものではありません。


海外に影響を及ぼしたこともたしかで、日本政府は国連で数回にわたって、吉田清治証言を朝日新聞が広く報じたことで海外に誤解が広がり、各地に慰安婦像が建てられた原因の1つになっていると指摘しています。また、2007年に米下院で慰安婦非難決議が可決されましたが、06年に議会に提出された議会報告書では、はっきりと「朝日新聞がこの件に関してキャンペーンを張った」と書かれているんです。


ケント 大事なポイントですよね。せっかくなので触れておくと、この米下院の慰安婦非難決議案は議員同士の駆け引きで成立したものです。中国系の抗日連合会からカネをもらっていたマイク・ホンダ議員が何としてもこれを通したくて、「協力してくれたら別の決議案に賛成する」と取引したものなのです。


しかもこの決議は本来、IWG報告を受けて行われるはずでした。IWG報告とは、ナチスドイツおよび旧日本軍の戦争犯罪に関連する機密文書を機密解除して再調査したアメリカ合衆国政府の省庁間作業班がまとめた報告書のことですが、結果的にIWGは「慰安婦を軍が強制連行などして性奴隷とした証拠はなかった」とするものです。調査員の1人は「抗日連合が期待していた証拠は出てきませんでした。ごめんなさい」なんて書いているのですから、この報告書の内容をちゃんと読ませて議会にかければ、決議は通らなかったかもしれない。その程度のものなのです。

朝日はいまも「英語で」嘘を書き続けている

山岡 朝日新聞に話を戻すと、吉田清治記事を取り消したあとも、慰安婦問題に対する「誤解」を特に海外にふりまいています。


朝日新聞の英字記事では、慰安婦に関する報道で、〈forced to provide sex〉、つまり「セックスを強制された」という定型文を必ず入れてきます。もうほとんどコピペかフォーマットのようなもので、慰安婦(comfort women)という単語のあとには〈forced to provide sex〉という説明が必ずつくのです。これはケントさんのようなネイティブスピーカーからすると、「物理的な強制によって性行為を余儀なくされた」というイメージを与える表現なんですよね。


ケント そうです。「性行為を強制された」というイメージで、この表現では女性側に断る余地はない。


山岡 朝日新聞の英字記事はたしかに〈sex slave〉、つまり「性奴隷」という表現は使わなくなってきていますが、本人の意思を無視して性行為を強制されるという表現は、限りなく〈sex slave〉に近いものになる。これを印象操作と言わずして何というのでしょうか。


裁判でも〈forced to provide sex〉という表現について、「仮に〈sex slave〉という言葉を使っていなくても、それを想起させる表現を使うのはおかしい」と指摘しました。これに対して朝日新聞側は、「これは強制連行や性奴隷だと明言するものではない」と主張しているのですが、では一体、何を表現しているのか。「無理やり性交渉を行った、としているけれど『強姦』とは言っていない」というようなもので、極めておかしな表現です。朝日新聞はどういう意図で〈forced to provide sex〉という表現を使い続けるのか、その説明責任を果たしていません。


ケント 使っている単語を文字どおりに取ってくれというなら、そうしましょう。〈forced to provide sex〉という表現に従えば、女性の側に断る権利はない。しかし、慰安婦になった女性たちには客を断る権利はあった。多額の報酬も受けていた。


朝日の英字記事では、〈forced to provide sex〉のあとに、〈to Imperial Japanese soldiers〉、つまり「大日本帝国の兵士に」と続きますが、旧日本軍や軍の兵士が女性の権利を奪って「性行為を強要」したのではない。仮に一定の自由を奪われていたとしても、直接女性たちの権利を抑圧した主体は軍ではなく、女性たちを管理していた業者のはずです。つまり、朝日がいくら弁解しても、この表現は事実と異なることを報じていることに変わりはない。

朝日にとっては事実より主張

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