そこで、私から緊急事態宣言後の地方債の発行について提言します。
地方債とは、財務省によると、〈地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるものをいいます。地方債は原則として、公営企業(交通、ガス、水道など)の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できることとなっています。
ただし、その例外として、地方財政計画上の通常収支の不足を補填するために発行される地方債として臨時財政対策債が平成13年度以降発行されています。
翌年度の地方債の予定額の総額については、各年末に国から地方債計画が公表されます。 地方債について、地方債計画に則して、資金別、事業別、会計別に分類すると、それぞれ次のとおりとなります。〉(https://www.mof.go.jp/filp/summary/filp_local/tihousaiseidonogaiyou.htm)
地方債は原則として、建設事業費関係の投資的経費に充当するため、地方自治体が発行されています。しかし、その例外として臨時財政対策債があります。臨時財政対策債とは地方財政支援の一環として、自治体の財源不足額を国と地方で折半し、地方負担分を臨時財政対策債で補填するものです。2001年度以降、多くの自治体が地方交付税と臨時財政対策債の発行を組み合わせて、行政サービスの経費を賄っています。
そこで、今回の新型感染症における緊急事態宣言下において、地方自治体が早期に発効できる新たな地方債・臨時財政対策債の発行を認めるべきです。
ただし、現在の臨時財政対策債では次のような批判があります。それは、臨時財政対策債は後年度に国から地方交付税で措置されるとはいえ、臨時財政対策債の債務を返済するのは、発行体である地方自治体です。そのため、赤字公債の発行は将来の世代への負担先送りとの批判です。
日銀による地方債購入
こうした批判に対して、日銀による地方債購入を提言します。
高橋洋一氏は日銀による地方債購入もオペレーション対象とすることを次のように述べています。
〈コロナ・ショックは未曽有の経済危機を引き起こそうとしている。その際、経済対策が必要になるが、巨額であるために中央政府と地方政府は債券発行が必要になる。こうした債券発行は、100年に1回レベルなら100年債を発行するというように平準化理論からも正当化できる。さらに、中央銀行は、それらを買い取り・引き受けしたりして、市中金利の上昇を抑制できる。〉
高橋洋一氏日本の解き方から引用(https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200508/dom2005080006-n1.html)
現在の制度では地方債最大償還期限は30年ですが、高橋氏は100年債という長期国債を発行することで、負担の平準化が図られると指摘します。さらに、日銀が地方債を買い取ることで市中金利の上昇を抑制できると指摘します。
ただし、地方債の場合は利払いや償還負担が発生するため、高橋氏は次のように解決策を述べています。
〈地方政府は、中央銀行の通貨発行益を直接利用できる術はないが、そこは中央政府から地方政府へ補助金などによる支援を行えばクリアできる。米国では、平常時に中央政府と地方政府は峻別され、日本の地方交付税のような中央から地方への補助金システムがないが、今回では中央政府が1500億ドル(約16兆円)の基金を設けて、地方政府に配分する。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)が地方政府債を買い取ることから、中央政府の通貨発行益を地方政府に還元する施策とも考えられる。日本では、中央政府と地方政府は米国より密接な関係なので、日銀が地方債を買い入れ、そこで生じる通貨発行益を中央政府が地方政府に還元する政策は、もっと検討されるべきである。〉(高橋洋一氏 日本の解き方から引用)
高橋氏の提言を実施すれば、地方自治体の利払いや償還負担もなしにすることができます。懸念材料はインフレ率が上がることですが、現在我が国のコアインフレ率は0.4%周辺で漂い、1%にも達していません。
今回の経済危機は、需要に対するマイナス要素が大きく、デフレを加速するので、インフレを心配する状況でなければ、地方債発行を日銀が買い入れ・引き受けするのは問題ありません。
日銀は3月にETFの買い入れ上限額をそれまでの年間6兆円から12兆円に拡大、4月27日の金融政策決定会合で国債の無制限買い取りを表明しています。高橋氏が提言するように日銀は地方債に対するオペレーションを実施するべきです。