「見かけだけの減税」でなければ……
先週9月25日に岸田文雄総理が新たな経済対策を打ち出した。これまでの岸田総理の政策からは大きな変化が見られる。対策の内容が充実し、補正予算編成において真水(直接的な財政支出)が15兆円以上となるようであれば、これまでの岸田内閣の考えが完全に転換され、「ニュー岸田」の誕生となるであろう。ここがまさに正念場であり、逆にそうならなければ国民は失望し、内閣支持率も厳しい状態が続くことは確実だ。
まず1つめの大きな変化は、「減税」を打ち出したことである。国民直接への減税項目については具体的に打ち出されなかったので、「見かけだけの減税」などとの声がある。私も国民の負担軽減につながる国民直接への減税を速やかに具体的に実現すべきと考えるが、今回の発表では、国民への減税の余地を残すとともに、賃上げ企業への減税強化など国民の給与増につながる施策が打ち出された。
また、半導体など戦略分野の国内投資に対する減税制度の創設も表明した。減税への強い言及は今までの岸田内閣の政策からは大きな転換であり、まさに見かけだけの減税であったり、逆戻りしないよう中身のあるものとしていかなくてはならない。
2つ目の大きな変化は、税収増の国民への還元を打ち出したことと、財政出動への意欲を示したことである。岸田総理は、「長年続いてきたコストカット型の経済から30年ぶりに歴史的転換を図る。この歴史的転換を着実に図れるよう、強力に政策的に後押しをしていく」と述べたうえで、「人への投資、賃金、さらには未来への投資である設備投資や研究開発投資まで、コストカットの対象として削ってきたことで消費と投資の停滞を招いた。この状況を脱し、活発な設備投資、賃上げ、人への投資による経済の好循環を実現」すると述べた。
まさにアベノミクスで実現を図り、その残された部分を実現していくとの表明であり、これが本当に実現されていくなら、これまでの岸田政権の考え方が大きく変わる。岸田総理も「歴史的転換」と述べているが、まさにコペルニクス的転回だ。
これで財務省は手を付けにくくなった
さらに、国民の「岸田内閣は負担増内閣」「国民生活の実態を分かってない」との声が届いたのか、岸田総理は、「足元を見ると、国民の皆様は物価高に苦しんでおり、個人消費や設備投資も力強さに欠ける不安定な状況にある。各種の給付措置に加え、税制や社会保障負担の軽減などあらゆる手法を動員する」と表明した。
「税制や社会保障負担の軽減」と述べたことは極めて重要であり、国民直接への減税や社会保障負担の軽減を、今回の補正予算案や年末の税制改正、来年度予算編成で、私は党内で強く主張し実現を勝ち取りたい。岸田総理が強く表明しているのであるから、政府与党でこれを実現しないわけにはいかないのである。
そして、経済対策の柱の最後に、国土強靱化、防災・減災が述べられたことも大きい。財務省は、子供子育て政策の実施において社会保険料の増額など国民の負担増による財源確保が図れないのであれば、他の分野でのコストカットが必要だとの考えであり、その際のターゲットとして狙われている分野は、医療、介護などの福祉、そして国土交通なのではないかと見られていた。
まず、今回の発表で国土交通分野は除外され、医療、福祉についても国民生活に直結するうえ、岸田総理自らが「社会保障負担の軽減」を打ち出したことから、これらについても財務省は手を付けにくくなったであろう。私は今こそ「こども国債」を発行し、子供子育て政策の財源とすべきであると考える。