地方を救う「地方債の発行」という切り札|渡辺康平

地方を救う「地方債の発行」という切り札|渡辺康平

都道府県の財政力により休業要請の給付金について金額やスピードに格差がついたことは、国家の緊急事態である新型感染症対策において根本から見直す必要がある!今度さらなる感染症の脅威などを踏まえ、緊急事態宣言下での地方債の発行と日銀による地方債購入を早急に検討すべきだ!


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迅速だった市町村の対応

国の場合、組織が大きいため迅速な対応ということが、そもそも不可能だという意見もあります。特に日本の場合、有事や緊急事態においても、平時の会議や調整事項が莫大で、国会議員への根回し、霞が関の縦割りなど映画「シン・ゴジラ」に描かれた世界そのままといえるでしょう。

それに対して、国に先行して市町村は独自の経済対策を打ち出していました。

地域の話題で大変恐縮ですが、私の住む福島県須賀川市では、県内で初めて新型感染症の拡大を受け、飲食業などを手掛ける中小企業・小規模事業者を対象に家賃の五割補助をはじめとした独自支援策を展開しました。

全国を見ると、国の補正予算が決まる前に市町村独で経済対策を打ち出しています。

福岡県北九州市は4月16日、店舗賃料の8割(上限40万円)補助が柱とする中小企業や個人事業主の資金繰りを支援する対策を発表しました。新潟県糸魚川市は財政調整基金を取り崩し、総事業費1億1,190万7,000円の補正予算をくみ上げ、4月27日から緊急経済対策事業を実施しています。こうした事例は調べれば多数出てきます。

こうした市町村は財政力が豊かだったから独自の支援策を打ち出した、というわけではなく、地域内の経済状況が明らかに悪くなっていたことに危機感を持ち、独自に動いたとみるべきです。

特に、市町村の場合は二元代表制であり大統領制に近く、予算について首長の専決処分で対応できるため、素早い対応ができました。(ただし、専決処分は後ほど議会で審議する必要があります)
しかし、年度当初のため予算に余りがあったわけではなく、地方自治体の財政調整基金を取り崩すといった手法がとられています。本稿の当初に述べたように、地方自治体の財政力によって、補償・協力金の内容やスピードに差が出るということが出るのは、国家の危機管理としては危ういものです。
今後、国政において、新型感染症対策の検証や特措法の見直しが行われていくと思います。その中で議論をして頂きたいのは、

①緊急事態宣言後においては、従来の地方債発行ルールを改正して、国と協議せず地方自治体が独自に発行できる限度額付き地方債を認めるべき。

②緊急事態宣言後は、負担の平準化から100年償還期限の長期地方債の発行を認めること。

③さらに日銀がオペレーションとして市中から地方債を購入して、地方自治体の利払いや償還負担もなしにすること。

以上の内容が国政で議論されることを切に願い、本稿の終わりとします。

著者略歴

渡辺康平

https://hanada-plus.jp/articles/186

福島県議会議員。1985年、福島県須賀川市生まれ。高校卒業後、航空自衛隊に入隊。2012年、航空自衛隊退官後、経済評論家秘書、国会議員秘書、福島県議会議員秘書を経て、2015年8月、須賀川市議会議員に初当選。2019年、福島県議会議員選挙で初当選。

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