しかし、乗り換える障害があります。地方債の起債手続きによれば、
〈地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要とされています。総務大臣又は都道府県知事の同意がある場合には、元利償還金が地方財政計画の歳出に算入されるとともに、公的資金の充当が可能とされており、仮に同意がない場合であっても、地方公共団体は議会に報告すれば地方債を発行できることとされています。但し、地方財政の健全性等の観点から、財政状況が悪化している地方公共団体が地方債を起債するときは、総務大臣又は都道府県知事の許可が必要とされています。また、総務大臣は同意又は許可をしようとするときは、あらかじめ財務大臣と協議することとされています。〉財務省 地方債制度の概要(https://www.mof.go.jp/filp/summary/filp_local/tihousaiseidonogaiyou.htm)
財務省 地方債制度の概要より
つまり、市町村では都道府県との協議が必要であり、最終的には財務大臣の同意がなければ地方債は発行できません。
特に地方自治体の財政については毎年計画される地方財政計画に基づき予算が組み立てられており、地方債についても従来の地方財政計画の中で運用されています。
当然ながら、財務省や総務省にとって緊急事態宣言後の償還期限100年の地方債について、認めることはないでしょう。
しかし、今回の新型感染症により明確になったことは、我が国が平時における財政ルールに縛られて、緊急時における需要不足(経済ショック)に素早い対応ができなかったということです。
時系列で読み直せば、3月9日には内閣府が発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.8%減、この成長ペースが1年間続いた場合の年率換算では7.1%減でした。この時点で20年1~3月期は新型感染症の拡大の影響も加わるため、日本経済の景気後退期入りの懸念が一段と強まっていました。
その後、補正予算が閣議決定されたのは4月20日、国会で成立したのは4月30日です。国の補正予算を受けて、福島県では5月5日の福島県議会臨時会にて県の補正予算を可決しています。国の経済対策が地方経済に反映されるまでは、どうしても時間がかかるため、地方独自での財源確保が必要です。
せめて、緊急事態においては、従来の地方債発行ルールを改正して、国と協議せず地方自治体が独自に発行できる地方債を認めるべきです。当然、地方債の発行額については限度額を設定することで、全国一律かつ素早い経済対策を実施することができるのではないでしょうか。