保守系の最大野党・自由韓国党の地方議員と討論する高成国氏(右端)=2019年7月29日投稿のユーチューブチャンネル「高成国TV」
保守系論客のなかでも歯切れの良さに定評がある政治評論家、高成国氏が運営するチャンネル「高成国TV」も、踏み込んだ親日論を展開する。ある投稿動画では、ゲスト出演した保守系の最大野党、自由韓国党の地方議員2人を相手に、日本に理解を示す韓国人たちが「親日派」と罵倒されることの異常さに憤慨している。
「議員A:(韓国での日本製品不買運動について)国民の自発的な愛国心の発露だ。評価したい。
高氏:自発的か否か、どうやって区別するのか。背後で左翼が反日運動を煽っている部分に的を絞って攻撃しなければならない。自由韓国党は安倍首相も文大統領も間違っているとしきりに言うけれど、安倍首相がいったい何を間違っていると言うのか。徴用工問題は1965年の韓日国交正常化などで全て解決され、慰安婦問題も朴槿惠前政権が安倍政権と交わした2015年の合意で終わっているというのが安倍首相の主張だ。それは覆せない。どんなに悔しい点があったとしても。政府間の約束事を破った文政権のほうが悪いに決まっている。それなのに、日本の首相だから無条件に間違っていると言うのか。
議員B:安倍首相が間違っているか否かは別にして、そのことで経済的に報復する行為に問題が……。
高氏:外交には外交で、経済には経済で対抗すべきだなどと言うのはあまりにも無邪気。外交問題に経済制裁で報復するのが国際情勢の現実だ。韓国だって、北朝鮮がミサイルを発射したら経済制裁をしたではないか。自由韓国党も意気地がない。ひとまず安全装置のように『日本が悪い』と言ってから、そのあとに文政権を批判するのか。私は『親日派』と批判されようが、言うべきことは言う。
議員B:この問題が日本と連動せざるを得ないのは国民に経済的被害が及ぶためで、だから日本も文政権も一緒に批判せざるを得ない。
高氏:文政権は日本とのパイプがないようだから、結局はこの問題は韓国の保守派が解決するしかない。慰安婦合意も日韓請求権協定も韓国が守らなければならないものであるし、なぜ突然、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)見直し話を持ち出すのかと問い詰めて、文在寅左派勢力と戦わなければならない。そういうふうに明確な立場を打ち出してから日本へ行って、『あなた方が気に入らないのは文政権であって、韓国の企業ではないはずだ。次の選挙で政権交代したあとに再び未来志向を目指すためには、いま、日本に度量の大きさを示してもらいたい』という具合に話を持ちかけなければ、日本だって韓国保守の話を聞いてくれるはずがない。それなのに、口を開けば『安倍も文在寅も間違っている』と言う。日本に行って安倍首相に何を話すつもりなのか。自由韓国党には本当に戦略というものがない」
このくらい所信を貫く韓国保守派がどんどん増えていけば、日本としても韓国と話が通じやすくなるというものだ。
地上波から姿を消した保守論客
登録者数が79万人に達するユーチューブチャンネル「神の一手」にゲスト出演した韓国の国会議員、李彦周氏(2019年7月12日投稿動画)
韓国メディアが業界関係各社のまとめとして伝えたところによると、韓国人がYouTubeに開設した時事問題チャンネルのトップ10(登録者数基準)には、「神の一手」(2019年8月5日現在の登録者数約79万人)や「ペン・アンド・マイク鄭奎載TV」(同約50万人)、「黄ジャンスのニュースブリーフィング」(同約42万人)、「高成国TV」(同約38万人)など保守系論客が直接発信するものがズラリと並ぶ。累積動画再生回数では2億回~4億回くらいのものも多く、いずれも視聴者の大半は中高年だ。
近年、スマホが普及し、操作の成熟度も高まって中高年は手軽にこれらの動画に接するようになっている。いつでもどこでも自由に視聴できることが大きなメリットだ。
韓国中高年が文政権批判の動画に熱中する背景には、韓国の偏ったメディア事情がある。文政権の路線に近い左翼的な言論労働組合がメディアににらみをきかせ、一部の保守系新聞以外の既存メディアで文政権批判を聞くことがめっきり減ってしまったからだ。ある専門家はこう指摘する。
「地上波3大キー局や広く普及しているケーブルテレビの左傾化で親政府論調が広がるなか、文政権の政策に不満を抱く中高年がスマホを駆使してYouTubeの反文政権動画を視聴し、鬱憤晴らしをしている」
3大キー局のうち公共放送の韓国放送公社(KBS)と文化放送(MBC)は、保守政権時に任命された社長がいずれも任期途中で交代させられ、「文政権批判」が影を潜めたと言われる。このうちMBCは、経営陣退陣を求める労働組合の長期ストライキの末、李明博・朴槿惠両保守政権批判で知られる元プロデューサーが選任された。
一方、保守系の最大手紙・朝鮮日報の系列で「文政権批判」の急先鋒を行くTV朝鮮の場合、文政権発足直後に大統領直属機関である放送通信委員会が実施した放送事業許認可の更新審査で一時、失格扱いになった。「誤報、暴言、偏向放送などの影響があった」というのが理由だったという。
その後、条件付きで再承認されたが、この出来事があってからというもの、それまでTV朝鮮の番組にコメンテーターなどとして頻繁に出演していた保守系論客たちが次々に番組から姿を消したことは有名だ。