保守系女性論客たちも自分たちでチャンネルを開設したり、投稿動画に出演して文政権の反日に異議を唱える動きが広がっている。左派から右派に転向し、先ごろ出版した文政権批判本『私はなぜ戦うのか』が話題の李彦周議員もその一人だ。
「日本との問題で、何かと言えば歴史を忘れるなと言うけれど、それは二度と再びあのように植民地支配されたわれわれの過ちを繰り返さないようにしようという意味で言わなければならないはずだ。
当時、衛正斥邪運動(現実より理念的価値を重視したり、国際的合意より国内論理を優先させた朝鮮王朝時代の閉鎖的純化運動)で国民の生活苦を放置したまま鎖国して国を国際社会から孤立させ、韓国が他国の植民地になることを許した王と為政者たちにこそ責任がある。そのことを忘れてはならず、まして繰り返してはならないのに、文政権は同じ道を辿ろうとしている」(YouTubeチャンネル「神の一手」出演の李議員の弁)
ある女性弁護士が運営するチャンネルでは、レギュラー出演する中道左派の時事評論家・閔泳三氏が、自分自身は左派世論が圧倒的に強い南西部・全羅道の出身でありながら、文政権の反日政策を辛辣に批判していて興味深い。
閔氏は、与党・共に民主党のシンクタンク、民主研究院が「韓日葛藤は来年四月の総選挙で与党に肯定的な影響を与える」という内容を盛り込んだ報告書を作成し、所属国会議員全員に配ったことが発覚して物議を醸したことについて、こう語った。
「昨年の元徴用工判決に対する日本の反発に対し、何ら対策も講じず、ただ国民の反日感情を煽りながら、(保守系で最大野党の)自由韓国党が文政権を批判すると、やれ親日派だの、やれ土着倭寇(日本の肩を持つ韓国人の意)だのと言ってレッテルを貼り、このムードを来年総選挙まで引っ張っていこうとしている。これは政治工作以外の何物でもない。
親北・親中政策で安保が危うくなり、間違った浮揚策で景気も悪化、それなのに総選挙で勝ちさえすればいいと考えるのは、権力に目がくらんでいるとしか言いようがない。これこそ売国行為というものだ。こうした政策を主導する政権内にいる学生運動出身者たちは、本当に悪い連中だ」
閔氏は文政権への怒りが収まらない様子だが、「冷静に考えてみれば」と言いながらこう続けた。 「韓国の政権・与党による反日扇動を、日本はどれだけ嘲笑っていることか。どれだけ韓国を見くびっていることか。本当に恥ずかしいと思わなければならない。こうなったら、野党が結束して政権を取り戻さないと駄目だ。最大野党の自由韓国党を中心に、まずは次の総選挙で与小野大の構図にもっていくしか解決に向けた方法はない」
韓国人でもちゃんと物事の見方が分かる人は分かる、ということだろう。
世紀の詐欺
韓国中高年が熱中するYouTube動画には、これまで紹介してきたような「親日」物の他に、文政権の過度な北朝鮮融和政策を批判するものも多い。
「昨日、皆さんは世紀の詐欺をご覧になった。いかなる会談を通じても核を放棄しない北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と、大統領に再選されるまで非核化ショーの交渉をやり続ける米国のトランプ大統領、そして米朝首脳会談の実現を自分の手柄にしようと考え、あわよくば板門店で米朝韓の三首脳による終戦宣言にこぎつけようとした文大統領による詐欺だ」
これは、6月末の板門店での3回目米朝首脳会談を酷評するチャンネル「黄ジャンスのニュースブリーフィング」を運営する黄ジャンス氏の話だ。
北朝鮮に関する特ダネ報道などで日本にも愛読者がいる月刊誌『月刊朝鮮』前編集長の趙甲濟氏は、自ら運営するチャンネル「趙甲濟TV」のなかで、韓国政府が日本への対抗措置の一つだとして検討し始めたGSOMIA破棄について、「韓国の安保不安を増幅させる自害行為」と断じた。
以下、趙氏の話。
「これまで文在寅政権は極左的な理念を韓日関係に持ち込み、日本を事実上の敵、北朝鮮労働党の金正恩を友達のように接する、つまり、友好国と主敵を交換するような行いをしてきたなか、決定的な失敗をしたのがGSOMIA破棄の示唆。この協定による情報交換では、韓国が日本に提供する情報より日本が韓国に提供する情報のほうが圧倒的に多く、しかもそれは北朝鮮の核・ミサイルに関する戦略情報ばかり。破棄すれば韓国に損害が発生し、日本にはそれほど影響は出ず、日米韓の連携を重視する米国は反発するだろう」
「破棄すべきはGSOMIAではなく、2018年9月の平壌での南北首脳会談で結んだ南北軍事合意書だ。北朝鮮がミサイル発射を繰り返しているのは、それだけで軍事合意書の精神に違反している。それなのにGSOMIAを破棄しようというのは、親北反日路線だからとしか説明できない。これこそ利敵行為だ」