韓国保守系論客たちがYouTube動画で「反日親北」路線の文政権を批判し続けることができるのは、規制が少なく自由に発信できるからだ。ところが最近になって、与党がこれらのYouTube動画をターゲットにした規制に乗り出そうとしている。
同党はこれらの動画について、「フェイク・ニュースが幅を利かせており、地上波放送局や総合編成チャンネル(ケーブルテレビ)と同じように規制が必要」などと主張、放送法の枠内に入れて法律改正の準備を進めている。仮に、これらの動画を規制する条項が新たに盛り込まれた場合、罰金や放送禁止など厳格な制裁を科すことも可能になる。
地上波や保守系ケーブルテレビだけでは飽き足らず、YouTube動画まで統制しようという文政権のあくなき言論弾圧とでも言うべきか。ただ、ある専門家は「個人の表現の自由に対し、審議基準を設けることへの抵抗感は根強い」と話す。
そもそもYouTubeが韓国企業ではないことの制約もあり、実際に規制ができるか疑問視する声も少なくない。
韓国中高年が「親日」動画に熱中するのは、いままさに韓国が空前の危機的状況に陥っているからにほかならない。自由民主主義陣営の一角として北朝鮮の軍事的脅威、露骨な覇権主義に走る中国に対抗するうえで、本来は日本との協力関係を強化すべきが、文政権の登場を機に協定や合意で解決したはずの歴史認識問題を蒸し返して国民の「反日」ナショナリズムを煽り、国益を踏みにじってまで日本を敵視している。
その先頭に立ち、顔色一つ変えない文大統領の姿には驚きと失望の念、いや戦慄さえ覚える。韓国が一刻も早く正気を取り戻してくれるよう願わずにはいられない。
(初出:月刊『Hanadaセレクション』2019年9月)
著者略歴
『世界日報』編集委員。1965年、静岡県生まれ。学習院大学法学部卒。92年から95年まで韓国滞在。帰国後、在日韓国人系の保守紙・統一日報社に入社。経済部、政経部などを経て編集局デスク。2005年、世界日報社に移り、同年から約10年間ソウル支局長。14年に再度帰国し、本社編集委員。