安倍総理は、戦後には珍しい地政学的観点を持った政治家です。麻生財務大臣も外務大臣時代に「自由と繁栄の弧」という地政学的価値観を掲げていましたが、これは近年の日本の外交の大きな流れであり、今後も変わることはないでしょう。
特に安倍総理は第二次政権発足後、インド、オーストラリア、イギリスなどとの防衛協力体制を築くところまで踏み込んでいます。特筆すべきは、インド・ロシアとの関係を深めたことです。インド・ロシアをぎ止めることで、位置的にも中国を包囲できるという、まさに地政学的感覚をお持ちなのです。
民間を見てみても、冒頭で触れたように韓国に対する不信感は募り、強大化する中国に対しても、手放しで信じ切っているような人たちは少数派になりつつある。日本企業も中韓からは退いていくフェーズに入ってきました。だからこそ、安倍政権の支持率は高止まりしているのではないでしょうか。
これは安倍政権が世論を誘導したのではなく、むしろ世論が変わったことによって、政権がこのような外交姿勢を取れる土壌が生まれたというべきでしょう。
もちろん、このようなシーパワー的な発想を理解できず、自由経済よりも分配を重んじ、あるいはトランプよりも習近平こそ世界のリーダーであるべきだ、という権威主義を重んじるランドパワー的な発想をする人たちも、日本にはまだまだ存在しています。しかし彼らが日本のメインストリームになることは、今後はおそらくないでしょう。
安倍総理退陣後の日本外交が心配だという声もありますが、世論、とりわけ若年層が安倍路線を支持している以上、この流れはそう簡単には変わりません。政治家は世論を見て考え、動くものですから。
今後、東アジアは「統一朝鮮」誕生など大転換期、大きな分岐点を迎えます。しかし「地政学的」観点を身に付けた日本であれば、大きく国策を間違えることはない。私はまったく悲観していません。
東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を担当。東大・一橋大など国公立系の講座を主に担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。世界史の受験参考書のほかに一般向け著書も多数。YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中。