2025年までに「統一朝鮮」が誕生する!|茂木誠

2025年までに「統一朝鮮」が誕生する!|茂木誠

米中覇権争いが激化していく一方で、朝鮮半島は2025年に向けて「統一朝鮮」への動きが活発化、それをアメリカは認めるだろう……起ころうとしている世界の大転換に日本はどう対峙すればよいのか。『地政学(地理+歴史+イデオロギー)』を武器に、駿台予備校大人気講師がズバリと指摘!(初出:『Hanada』2019年12月号)


日本人が知るべき東アジアの地政学 ~2025年 韓国はなくなっている~

統一朝鮮が直面する矛盾

一方、中国やロシアなどのランドパワー国家は陸軍を増強し、イデオロギーに基づく中央集権的な発想で、強力な国家権力と官僚機構による富の再分配を重視します。

強力な権力が農民たちをガッチリと管理し、分配することでさらに権威を高める。巨大な官僚機構による計画経済で国家を運営してきた中国・ロシアのランドパワー国家が、20世紀に共産主義を受容したのは当然の成り行きだったのです。

では、半島である韓国、ひいては「統一朝鮮」はどうなのか。シーパワー国家である日本やアメリカとの関係を希薄化し、ランドパワー化するのでしょうか。

ここに「統一朝鮮」が直面する矛盾が生じてきます。ランドパワー国家は歴史的に見て、必ず経済的に失敗してきました。崩壊したソビエト連邦や現在の北朝鮮がいい例でしょう。人間の理性では経済活動を完璧にコントロールすることはできませんから、北朝鮮もこのままランドパワー的発想でいる限り、崩壊の日がやってくる。

中国共産党はこの弱点を改革開放で乗り切ったかに見えますが、汚職が増え、格差が広がった。これに対する反動から、毛沢東的統制経済を継続したい習近平のグループと、改革開放を続けたい上海閥が、政権内部で熾烈な争いを展開しています。しかし米中貿易戦争で経済成長が鈍化している以上は、もはや分配すべき富も枯渇し、習近平路線は破綻するでしょう。中共は、崩壊する前に習近平を「総括」しなければならなくなるでしょう。

では、「統一朝鮮」はどうするのか。香港型の「一国二制度」によって韓国の自由主義経済を統一後も認めたうえで、そこから北が利益を吸い上げる。もちろん韓国経済は弱っていく一方ですが、シーパワー的な経済発展よりも民族の誇りを重視する文在寅政権を国民が支持し続ける以上、その方向で進むよりほかない。貧しいけれども誇り高い、朝鮮王朝の復活です。

もちろんいまの韓国にも、日米をはじめとするシーパワー、自由主義的な価値観で国家の発展を維持しようとする親米派がまだいます。しかし「事大主義」の誘惑に乗り、アメリカを凌ぐ大国になるかに見えた中国に接近したことで、アメリカの信頼を裏切ってしまいました。

日本との関係でも、「昼は反日、夜は親日」という隠れ親日派が少なからずいました。しかし結局は、親北派文在寅政権の成立で、シーパワー勢力との連携を模索する人々は政権からパージされてしまいました。

これは、かつて19世紀の朝鮮でも起きたことです。日本と組んで近代化を図ろうとした金玉均ら「開化派」が、政権によって粛清されました。彼らを支援するため、日本は日清・日露戦争に踏み切り、その結果として満州進出を図り、朝鮮半島や満州に莫大な投資をした挙句、敗戦ですべてを失い、感謝もされず、謝罪と反省を求められていまに至るのです。

大日本帝国に代わって韓国防衛を引き受けた米国は、朝鮮戦争期に日本を兵站として利用しました。日米は足並みを揃えて韓国の経済を支え続け、ニクソン訪中後は中国に対してさえ過剰に肩入れして、投資を行ってきました。

もし韓国や中国に対する政府開発援助(ODA)を日本国内に回していたら、「失われた30年」どころか、平成を通じて浮上することのなかった日本経済は、いまとは全く異なった状況になっていたでしょう。

大陸国家への過剰な関与が地政学的に致命的な間違いだったことを、まず誰よりも日本人が学習する必要があると思います。

地政学的観点と過去の歴史に学べば、日本は「統一朝鮮」の成立に関与せず、静観するべきでしょう。シーパワーたる日本は、むしろ台湾・東南アジア・豪州と連携すべきなのです。韓国に対しては、筑波大学名誉教授の古田博司さんが「助けるな、教えるな、かかわるな」という「非韓三原則」を唱えていらっしゃいますが、全く同感です。

地政学的観点を持った総理

Getty logo

関連する投稿


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパに君臨した屈指の名門当主が遂に声をあげた!もはや「ロシアの脱植民地化」が止まらない事態になりつつある。日本では報じられない「モスクワ植民地帝国」崩壊のシナリオ。


韓国で「尹大統領支持」急増の理由 | 柳錫春・閔庚旭

韓国で「尹大統領支持」急増の理由 | 柳錫春・閔庚旭

弾劾無効と不正選挙の徹底検証を訴える声が韓国社会に大きなうねりを巻き起こしている。いま韓国で何が起きているのか? 韓国の外交・安保に生じた空白は今後、日韓関係にどのような影響を及ぼすのか? 韓国政治に精通する柳錫春元延世大学教授と、公明選挙大韓党の閔庚旭代表が緊急独占対談で語り合った。


韓国でも報じられない「尹錫悦大統領弾劾裁判」の真実 | 康容碩

韓国でも報じられない「尹錫悦大統領弾劾裁判」の真実 | 康容碩

尹錫悦氏と司法研修院の同期でYouTubeフォロワー100万人を誇る人気弁護士が独占インタビューで明かした「大統領弾劾裁判」の全貌。


『こんなにひどい自衛隊生活』、誕生のきっかけとなった「少佐」との出会い|小笠原理恵

『こんなにひどい自衛隊生活』、誕生のきっかけとなった「少佐」との出会い|小笠原理恵

「なぜ、自衛隊の待遇改善問題に取り組み始めたのでしょうか」。時々、人から聞かれる。「1999年3月に発生した能登半島沖不審船事件に携わった、幹部自衛官とSNSを通じて友人になったからです」と私は答えている。彼のことを私たち、「自衛官守る会」の会員は「少佐」と呼んでいる――。(「まえがき」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

高齢者のインフルエンサーと呼ばれ、ベストセラーを次々と出してきた和田秀樹氏が「幸齢党」を立ち上げた。 なぜ、いま新党を立ち上げたのか。 「Hanadaプラス」限定の特別寄稿!