韓国保守派は事大主義
「文在寅に感謝しよう」
そう言うと、『Hanada』の読者は何事かと思うかもしれません。しかし、文在寅が意図的としか思えない日韓関係の破壊を繰り返し、北朝鮮との関係改善、さらには統一に向けて前のめりな姿勢を示してくれたことで、「日韓友好」の幻想を抱き続けてきた日本人に、冷や水をぶっかけてくれた。このことに、日本人はむしろ「ありがとう、文在寅」というべきではないでしょうか。
もちろんこれまでも、端から韓国に対する幻想など抱いていない人たちもいましたが、今回の文在寅の振る舞いには、ついに日本人の一般層までもが、韓国に対する強い反発を抱くに至りました。
少し前まで、韓流ドラマや韓流アイドルを肯定的に扱っていたワイドショーまでもが、韓国批判を報じるようになりましたし、安倍内閣の対韓外交姿勢も、多くの人が支持しています。
世論調査によれば、韓国の「ホワイト国」除外について支持する人が67.6%、政権不支持層でも55.2%を超えるなど(FNN・産経新聞合同世論調査、2019年7月調査分)、お人好しの日本人もようやく目が覚めたといえるでしょう。
海洋国家日本は、大陸国家に極力かかわらないほうがいい。そのためにも、文在寅大統領には「いまの方向で、もっと頑張れ」と言っていいのではないでしょうか。何より、いくら日本が対韓関係を改善しようと動いても、もはや「北主導の統一朝鮮」という未来は不可避だからです。
韓国では保守派であれ、進歩派であれ、「反日」であることに変わりはないように見えますが、その内実は大きく異なっています。
韓国の保守派は親米で、外国からの助けを借りた軍事独裁政権をルーツとしています。この「外国からの助けを借りる」というところが要点で、韓国の保守派が親米派なのは、自由主義陣営であることを理由としているわけではありません。単に、強いものにつくという朝鮮民族の価値観、「事大主義」ゆえです。
親米派政権だった李明博・朴槿惠政権が米韓同盟を維持する一方で、中国の台頭をみるや対中融和政策に転じたことを思い出してください。親北派に比べて日韓関係を重んじていたのも、強い日本経済の助けに期待していたからで、これが期待できなくなれば反日に走る。要するに、韓国の保守派は、アメリカであれ、中国であれ、強いものに近づいていく「事大主義」的な勢力です。
断交を望んでいるのは韓国
一方、親北派は「南北統一」を至上命題とし、「朝鮮民族」の主体を回復することによって自主独立すべきだと考えています。そのため、戦後の韓国が米軍の駐留を許し、日本からの支援で経済発展したことを恥じているのです。
文在寅がこれまでの歴代政権以上に日韓関係を破壊しにかかっているのも、ここに理由があります。日本の干渉によって近代化し、米軍の占領下で独立し、1965年の日韓基本条約による日本からの経済支援で復興を成し遂げた過去を、彼らはすべて否定したいと思ってきました。文在寅をはじめとする親北派は、大韓民国の歴史そのものを「清算」したかったのです。
日本のメディアが「日韓断交」といった見出しの特集を組んで、日本の左派から批判されていますが、むしろ「断交」を望んでいるのは韓国側なのです。
それが及ぼす悪影響など、彼らは考慮しません。どこの国でも進歩派、リベラル政権には、「リアリズム」(現実主義)を軽視し、「アイデアリズム」(理想主義)だけでひた走る傾向があります。日本でいえば民主党政権、なかでも鳩山政権時代を思い出していただければ、実感できるでしょう。
問題は、理想主義だけでひた走る文在寅政権を、韓国民の約半数がいまだに支持していることです。
私は、2025年までには「統一朝鮮」が誕生し、韓国という国は消滅しているだろうと考えています。
もちろん、統一には北朝鮮の意向もかかわってきますが、これも問題ありません。『Hanada』2019年10月号で、篠原常一郎さんが「文在寅に朝鮮労働党秘密党員疑惑」を報じていましたが、文在寅の思想背景は、北朝鮮の指導理念と完全に一致しています。
チュチェ思想とは、簡単に言えば「マルキシズムの化粧を施した朱子学」であり、朝鮮民族という一つの有機体において、金一族が頭脳、朝鮮労働党が神経組織、軍などその他の国家組織が臓器にあたるという思想です。そのため、金体制と党の意志に従わないものは異物として排除される。
そして、チュチェ思想は朝鮮民族がどの大国にも屈せず、主体的に国家を運営するためのイデオロギーですから、自主独立を志向する韓国の親北派も飛びつく。しかも北朝鮮は核ミサイルを持ったのですから、朝鮮民族の独立を守るためのこの「宝」を手放すはずもない。
北朝鮮は韓国を、中国における香港のような立場に置くでしょう。つまり「一国二制度」です。核を持つ一方で、韓国から自由経済のおいしいところをストローのように吸い上げ、金正恩体制を生き永らえさせるための栄養源とする。ひいては、金正恩は朝鮮民族統合の象徴となるかもしれません。