文在寅新年記者会見は日本への”挑戦状”|名村隆寛

文在寅新年記者会見は日本への”挑戦状”|名村隆寛

日韓関係が、年を越して悪化の度を一層増している。その最大の原因は、韓国の文在寅大統領が1月10日に行った「新年の記者会見」での日本に対する発言だ。


政治争点化したのは韓国

いわゆる徴用工問題(個人の請求権をめぐる問題)は、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」である。日本企業に賠償金の支払いを命じた韓国最高裁の確定判決と、これを政府が尊重する韓国の状況は国際法に違反している。この立場は日本政府の主張でもあり、昨年10月30日の新日鐵住金に対する韓国最高裁の判決後、韓国政府にも再三伝えられたものだ。

にもかかわらず、文在寅大統領は新年早々、「日本に責任を転嫁しようという発言」(菅義偉官房長官)で返してきた。国際協定を無視した開き直りに近い態度で、日本側に問題を丸投げしたも同然だ。「約束を守る」という韓国政府がとるべき基本的なことには触れていない。

それどころか、日本に対する言葉は説教じみてもいる。「政治争点化し非難材料とし、問題を拡散させている」と批判されるべきは、まさしく文在寅大統領ではないか。それも認めずに、現状を変更しようとしているのも韓国だ。

文在寅大統領は、三権分立の原則を理由に「最高裁判決を尊重しなければならず、行政は何もできない」と言い張るが、この主張は国際的には通用しないものだ。

昨年12月以降も、韓国では日本をめぐる出来事が続いた。

・光州高裁が三菱重工業を相手取った元女子挺身隊の損害賠償訴訟の控訴審で同社に賠償命

・慰安婦問題の国際認知へ韓国が初の予算計上

・光州地裁控訴部、元女子挺身隊の控訴審で韓国・三菱重工業に賠償命令

・韓国政府を相手取り、元徴用工や遺族ら1103人が集団訴訟

・韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機へのレーダー照射

・日韓慰安婦合意から3年も、韓国は合意破棄同然

・韓国国防省がレーダー照射問題への反論動画を公開

・新日鐵住金の資産差し押さえに着手。同社の韓国内資産への差し押さえの効力が発生

韓国メディアのご都合主義

韓国側で起きる問題によって、日韓関係は日に日に悪化の一途をたどっている。

そして日本政府が反発するたびに、韓国政府は「対応策を検討しているから感情的になるな」 「日本の反応は過剰だ」と言い続け、その場をしのいできた。

だが、レーダー照射問題が・発覚・し、日本政府が抗議したことで、韓国メディアの多くが「韓日関係悪化の原因は安倍晋三首相にある」と、またしても決めつけ報道を展開。韓国日報は「防衛省に自信があるなら『レーダー襲撃』資料から公開せねばならない」と主張していた。

その要求に応えるかたちで防衛省は「事件当時」の映像を公開したが、韓国国防省は「深い憂慮と遺憾」を表明し、「日本の哨戒機に追跡レーダーを運用していない」との主張を繰り返し、「(北朝鮮船舶の)救助活動に集中していた韓国軍に対し日本の哨戒機が低空危険飛行したことは、友好国として非常に失望する」と日本を批判した。

韓国メディアも映像公開を批判。なかでも、映像公開を要求していたはずの韓国日報は、今度は「一方的な動画公開は深刻な外交的欠礼」と言い張り、「政治指導者が国内政治に利用しようとむしろ葛藤を煽ったのは嘆くしかない」と安倍首相を非難した。「支持率が落ちている安倍首相が、国内世論のために煽っているとの観測もある」(東亜日報)とのピントがずれた批判も相変わらずだ。

国防省関係者の話として、「日本からの無線での英語の発音が悪く聞き取れなかった」(中央日報など)といった言い訳じみた報道も。ソウル新聞に至っては、「哨戒機の低空飛行は米軍艦に自殺攻撃を敢行した『神風』を連想させるとの指摘もある」と、自衛隊機を神風特攻隊に結びつけた。

日韓防衛当局は1月14日、この問題についてシンガポールで実務者協議を行ったが、平行線をたどる。翌日、韓国国防省報道官は記者会見で、レーダー照射を裏付ける決定的な証拠が日本側からは示されなかった、と主張。協議で、韓国駆逐艦の全体的なレーダー情報(周波数)を明らかにすれば、日本が収集した情報の一部を提示するという日本側の提案を韓国側が拒否したことに言及した。

同省報道官は、「受け入れられない非常に無礼な要求で、問題解決の意思がない強引な主張だ」と日本を批判。「日本の継続的な非紳士的な行動に対し、大いに遺憾を表明する」と訴えた

続く文在寅発言の踏襲

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