【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか  ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


知日派二人が去った後

2025年、知日派アメリカ人の大家が相次いで二人、亡くなった。海軍出身で国務省副長官を務めたリチャード・アーミテージと、国際政治学者で政府高官も務めたジョセフ・ナイである。二人は2002年に対日外交指針である「アーミテージ・レポート」を作成。さらに2012年には日米同盟に関する報告書を共同執筆した。

2025年からスタートした第二次トランプ政権がこれまで以上に同盟を軽視するかの振る舞いを見せている中、二人の知日派の死去は、何やらこれからの日米関係の先行きを暗示するかのようにも思えた。

アメリカの大学で日本政治学など日本に関連する学科が減っているとも指摘される中、アメリカに二人に続く知日派はいないのか。そんな思いも高まる中、出版されたのがジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機―アメリカの変貌と日本の戦略』(日本経済新聞出版)だ。

帯文に〈「道産子アメリカ人」による初の著書!〉と銘打たれているように、1981年生まれのウォーカーはバージニア州出身ながらも1歳の頃両親とともに日本へ引っ越し、アメリカの大学に進学するまでの間を北海道で過ごした。

この経験が、「アメリカ人として日本で過ごしたのち、日本出身者としてアメリカで過ごす」というインサイダーとアウトサイダーが交わる著者の視点を養ったようだ。現在は日米関係の教育や交流事業を行う非営利団体ジャパン・ソサエティの理事長兼CEOを務める。

本書はトランプ以後の日米関係や同盟のあり方、ビジネスの現場への影響に関する提言を行う。「トランプ革命」とも言える大変革の時代に、日本はアメリカとの付き合い方、世界へのかかわり方を再考しなければならない事態に至っているとの認識に基づき、これからの日米関係のあるべき姿と日本が取り組むべき施策について解説する。

同盟の転機 アメリカの変貌と日本の戦略

「獺祭」が変えた外交のあり方

本書の筆致はどこか静謐さを感じさせるもので、アメリカの現状を扱いながらもトランプを過剰に非難したり褒めたりすることはない。トランプが戦後コンセンサスを〝破壊〟する存在としながらも、嘆いたり怒ったりすることなく、ある意味粛々と、その変化がもたらす状況と、それによって迫られる日本のマインドセット更新の必要性について語っているのだ。

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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