新聞はあと5年でさらに1000万部減少する|下山進

新聞はあと5年でさらに1000万部減少する|下山進

タイトルは『2050年のメディア』だが未来を予想したものではなく現在ただいまの一冊。いまや誰もが当たり前のように使っているヤフーがどのように生まれ、ニュースのプラットフォームとして成長したのか、その一方でかつてのメディアの雄・新聞の地位が何故下がっていったのか……インターネット以降のメディアの内幕を描く本格ノンフィクション。著者は花田紀凱編集長の『週刊文春』時代の部下だった下山進氏。編集長が傑作と評する本書について直撃インタビュー!


──僕はこれまで読売新聞社長、山口寿一さんについてはそれほど知らなかった。

本書を読んで、「ヨミウリ・オンライン」の見出し使用で著作権を争った裁判、「清武の乱」(巨人軍のゼネラルマネージャー清武英利氏が渡邉恒雄主筆を告発した事件)の処理や、新聞協会の腐敗の摘発などの活躍を知り、立派な人物なんだと思いました。山口さんとは取材の前からの知り合い?

下山 いえ、面識はありませんでした。だから、取材申し込みの手紙を会社に送って、着いた頃に電話をしたんですよ。当然、本人は出なかったんですが、秘書室の人が、

「下山さんの手紙はいただいており、拝読しております。いま下山さんのお書きになった本を取り寄せておりますので、それを読み終わってからお返事するとのことです」

と言うのでビックリしました。相手の本を読むというのは、取材を受ける際の基本ではあるんですが、なかなかできることではありません。ましてや読売新聞グループ本社の代表取締役社長という多忙な職にありながら、たいしたものだと思いました。最後の取材は、2019年の6月、グループ本社の株主総会の前日でした。

ヤフーも日経も、「出版前に原稿を見せてくれ」と言ってきました。もちろん、それは断りましたが、そういったことを一切言わなかったのは読売だけです。私が調査している範囲などから、読売にとってはシビアな本になるとわかっていながらも、正面から取材に対応したのは立派。ジャーナリズムというものをよく理解していると思いました。

──読売新聞は仕事始めの日に社員を集めて賀詞交換会が行われ、渡邉恒雄さんはそこで毎年スピーチをしていたが、2018年にはこう言った、と書いてある。

「読売はこのままではもたんぞ」

この言葉の真意は?

下山 私もその真意を聞きたくて、渡邉さんに手紙を出しました。しかし、広報はその手紙を共有確認したうえで、こう返事をくれたんです。

「渡邉は毎日送られてきた手紙についてはチェックしていますが、秘書部を通じて広報に話がおりてきていないということは対応しないということだ、と我々としては推察する」

ヤフーのグローバル化

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ヤフーとLINEが統合。

──紙の新聞は、今後どうなっていくと思いますか?

下山 確実に言えるのは、この10年で部数が1000万部落ちましたが、あと5年でさらに1000万部以上落ちていく、ということです。

 この5年で経営を根本的に変えていかなければ、成り立たなくなる新聞社はたくさん出てくると思います。

──一方のヤフーはLINEと統合する、と2019年11月14日の各紙は報道している。

下山 面白いですね。この『2050年のメディア』の終わりは、ヤフーの国際化について書いているんです。実は、ヤフーは米国ヤフーとの契約があって、ヤフーの商号を使って海外展開ができなかった。ウェブの企業でありながら、日本国内でやるしかなかったんです。

が、米国ヤフーが傾き、ベライゾンに売却され、ベライゾンが買わなかった旧ヤフーはアルタバと改名。そのアルタバがヤフー・ジャパンの株を26.82パーセント持っていたが、その全ての株を2018年9月に売却した。

つまり、米国からの縛りが完全になくなったわけで、今後の焦点はこれをもってどうグローバル化を図るかということだ、と書きました。

実は本が出たあと、社長の川邊健太郎さんとメッセンジャー(フェイスブックの通信機能)のやりとりをした際にこのことに触れると、一言だけ「いいね」のマークを送ってきた。「どういうことなのかなあ」と思っていたら、LINEとの統合のニュースが出ました。

すでにアジア諸国に進出しているLINEと統合することをバネにして海外に出て行く、そこに今回の統合の大きな意味がある、と私は思っています。

この長い本を、私はこんな言葉で閉じています。

「ヤフー・ジャパンが、創業時の進取の気性をもって、ソフトバンクグループとともにグローバル化に挑むとすれば、それはそれで、また新たな心躍る物語の誕生ということになるだろう」

ヤフーとLINEの統合は、「新たな心躍る物語の誕生」というわけですね。

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