【天下の暴論】花見はやっぱり難しい|花田紀凱

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28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!


一昨年はうまくいったが……

タイミングばっちりだった一昨年の墨堤通り

この季節、毎年、編集部で花見をする。校閲担当、カメラマン、親しいライターなど十数人+ゲスト。
 
かつては目黒川沿いの沖縄料理店「みいかじ」を借り切ってやっていたのだが、閉店してしまったので、一昨年から場所を変えた。
 
花見なら、やっぱり墨堤でしょ、ということで以来、墨堤で。
 
一昨年は満開だった。
 
吾妻橋のアサヒビール前から歩き始め、桜橋まで隅田川を上り、桜橋近く長命寺の桜餅、言問団子を横目にして、桜橋を渡り、最近、招き猫で名高い、今戸神社。そこから待乳山の池波正太郎さん生誕の地の碑へ。
 
そう言えば、この年が池波正太郎さんの生誕100年で、墨堤の所々に「鬼平犯科帳」とのゆかりを紹介する高札が掲げられていた。
 
そうか、池波さんが生きていれば今年で100歳か、と感慨深いものがあった。
そこから、台東区立図書館内の池波正太郎記念館へ。
その後は、また吾妻橋を渡って、本所の料理屋「峰屋」で大宴会。
この年は大成功だった。
 
ところが、その後がいけない。
昨年は、(幹事はカミさんです)3月22日に設定したが、当日になっても、桜は満開どころかまだ一つも咲いていなかった。
 
そう言えば、10年ほど前だろうか、出版関係者で、たまには屋形船でも乗って花見をやろうという話になったことがある。幹事は今は亡き猪坂豊一さん。
 
寒い日で、品川で屋形船に乗り込む時から嫌な予感はしていた。
 
船中で、酒を飲み、料理を食べながら小一時間、墨堤付近に到着したのだが、両側、桜は全く咲いていなかった。
 
船先に立った石平さんが、「寒いですねぇ」とボヤいていたのを今も覚えている。
 
昨年は、仕方ないから向島の百花園でも行くかということになり、行ってみたが、そこも萩のトンネルはもちろん緑は少なく、枯れ庭だった。
「幹事の責任だ」とからかわれ、カミさん、「峰屋」でやけ酒をあおっていた。
 
こういう席でもなんとなく酒飲みグループとあまり飲まないグループとが、自然に別れてしまうのが不思議だ。
 
話を戻す。
 
今年の花見だ。
4月初めの開花予想では、東京の今年の満開日は29日だった。
まさに幹事が、予約した日。ゲストに河井克行、あんり夫妻を招き、「今年は大丈夫」と安心しきっていた。
 
ところが――。
 
4月中旬から天候が不順となり。開花が大幅に遅れてしまったのだ。
しかも、当日は小雨。墨堤を歩くのは不適切。
うまくいかないものだ。
しかたない。ぼくを含め、メンバーの全員がまだ登ったことがないというので、東京スカイツリーに行くことにした。
 
さすがに混んでいたが、団体で(10人から)申し込むと、割引のうえ、優先的に一般とは別のエレベーターに乗れて、これはお得。まだ行ったことのない方には団体で行くことをおすすめする。
 
もっとも、空気の澄んだ冬と違い、しかも小雨だから、富士山はもちろん、遠景は望むべくもなく、ただ、ただ、スカイツリーに登ったという実績のみ。
 
今年も、花見はうまくいかなかった。それでも、「峰屋」の料理はとてもおいしく、楽しい時間だった。
 
幹事、来年こそ、頼んますよ。

花田紀凱

https://hanada-plus.jp/articles/183

月刊『Hanada』編集長。1942年、東京生まれ。66年、文藝春秋入社。88年、『週刊文春』編集長に就任。部数を51万部から76万部に伸ばして総合週刊誌のトップに。94年、『マルコポーロ』編集長に就任。低迷していた同誌部数を5倍に伸ばしたが、95年、記事が問題となり辞任、1年後に退社。以後『uno!』『メンズウォーカー』『編集会議』『WiLL』などの編集長を歴任。2016年4月より現職。

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