廃棄物処理法に違反の疑い
では、中村氏の対応は、本当に法的な問題がなかったのか。
結論を先に言おう。中村氏の対応は、国が定めた廃棄物処理法に違反していると考えられる。
本誌2019年3月号の「中村愛媛県知事に重大疑惑」という私のレポートに対し、中村氏は2019年1月31日の知事記者会見で長々と反論したが、中村氏の主張は廃棄物処理法の理念を逸脱した内容だった(会見内容は愛媛県庁のホームページ参照)。
知事会見で中村氏は、「産廃の許認可事務というのは、国の法定受託事務」であり、許可に関する「裁量というのは、県(筆者注・松山市の誤り)にはない」 「そこを逸脱すると訴訟で負けてしまいますから、その範囲で行った」と主張、自らの対応を正当化した。
だが、この主張は正しくない。
まず産廃業者への指導、処分、許可の権限は国にではなく、都道府県知事、政令指定都市と人口30万人以上の中核市(松山市はその一つ)の首長にある。
一方、許可の「裁量」に関しては、たしかに首長は、事業者が一定の条件を満たす場合、許可しなければならないと決められている。
2018年3月、環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長が自治体向けに出した「許可事務等の取扱いについて」(通知)を見てみよう。
「申請者が基準に適合する施設及び能力を有し、かつ、欠格要件に該当しない場合には、必ず許可をしなければならない」
だがこのことをとらえて、中村氏が、首長には不許可権限がないかのように主張し、自らの怠慢を正当化するのは誤りだ。
なぜなら、中村氏が事業再開許可を出した当時のレッグは「基準に適合する施設及び能力」を持たないばかりか、「欠格要件に該当」する悪質業者であり、許可を出してはいけない相手だったからだ。
先の環境省の通知は「欠格要件」に該当するかどうか、自治体首長が「確実に調査を行い、該当する場合は速やかに不許可処分を行うこと。また、更新許可の場合においては、速やかに従前の許可の取消しを行うこと」と定めている。
事実を捻じ曲げ、居直る
では、欠格要件が該当するのはどんな事業者なのか。
これについて通知は、「申請者の資質及び社会的信用の面から、将来、その業務に関して不正又は不誠実な行為をすることが相当程度の蓋然性をもって予想され、業務の適切な運営を期待できないことが明らかである者について、許可をしてはならない」と定め、一例として「違反を繰り返しており、行政庁の指導等が累積している者」を挙げている。
また、欠格要件とは別に、通知は許可の要件として「事業を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎」がなければならないとして、「少なくとも債務超過の状態」でないこととしている。
だがレッグは、先の会見で中村氏がいみじくも指摘したように「改善の文書指導とか出し続けたんですが、全然応えられない」 「あれだけのことをしでかしてですね、無責任にいなくなる。ましてや会社が転売、転売を繰り返して、自殺者まで出るというような会社でした」 「悪質極まりない状況になっていた」というのだから、速やかに不許可処分を出すべき相手だった。
また、中村氏が事業再開許可を出す3カ月前の時点のレッグの貸借対照表によると、レッグは6885万円の債務超過であり、これだけでも事業再開許可を出してはならない事業者だったのだ。
そもそも中村氏が、違反を重ねてきたレッグに対し、ダラダラと任意の行政指導を繰り返したこと自体、廃棄物処理法に反している。
環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課は、私の取材にこう答えた。
「漫然と指導を繰り返してはならないというのが廃棄物処理法の原則です。指導を繰り返してもダメな相手には、行政命令をかけねばなりません」
ところが中村氏は、あたかも自治体首長には業者を不許可にする権限がないかのように事実を捻じ曲げて説明、「法律論の中では、やったつもりなんです」と会見で居直り、大規模環境汚染の原因となった転圧と事業再開を許可した自分の対応の誤りを決して認めようとしないのだ。