なぜ新聞、テレビは成年後見制度の欠陥を報道しないのか?
3年後、65歳以上の認知症の人の数は約675万人になり、5・4人に一人が認知症になると予想されている。
政府は認知症高齢者と知的障害者を支援するため2000年に成年後見制度をスタートさせたが、この制度には多くの欠陥が指摘されており、一昨年9月には国連から「差別的」との批判を受けている。
だが日本の新聞、テレビは成年後見制度の欠陥をほとんど報道しない。現に国連の批判についてもNHKが簡単に報じた程度で、あまり国民に知られていない。
新聞、テレビが制度批判に慎重な理由は、制度の旗振り役が「法の番人」の最高裁判所だからだ。ある新聞社の編集幹部が語る。
「新聞、テレビには“法の番人の最高裁が間違った制度を作るはずがない”という思い込みが非常に強い。この制度の問題点を社内で指摘しても、『それは例外だろう。最高裁が作ったのだから大半はうまく機能しているはずだ』と聞く耳を持たれない」
しかし最高裁の無謬原則が通用するのは国内だけ。実際、先の国連(障害者の権利に関する委員会)は日本の制度が「障害者が法律の前に等しく認められている権利を否定」していると強く批判。成年後見制度に関する全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、民法を改正することを求めるとともに、認知症高齢者らの自立と意思を尊重する仕組みへの変更を勧告した。
国連が厳しく批判した日本の「法定後見」
日本は、岸田文雄外相時代の2014年に国連の障害者権利条約を批准しており、国連勧告に応じなければならない。
批判されたのは、日本の成年後見制度の根幹部分だ。具体的には①国家(家庭裁判所)が認知症の人や知的障害者から、財産管理権や契約等の法律行為についての本人の意思決定権を強制的に奪して、➁家裁が選任した後見人に、本人に代わって財産管理や契約を結ぶ代理権を与える仕組みである。
この仕組みを「法定後見」と呼ぶ。成年後見制度は、国家の強制力に基づく法定後見と、本人が認知症になる前に自分の後見人を決める任意後見の二つからなるが、国連は、法定後見の「意思決定を代行する制度」そのものを「障害者が法律の前に等しく認められる権利を否定」していると批判し、岸田政権が進めている「第二期成年後見制度利用促進計画」についても、同じ理由から懸念を表明している。
要は、日本の制度は国連からダメ出しされた欠陥品なのだ。